東京都森林

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「東京都」の森林 現状と課題、そして取り組み

「東京都」の森林

東京都の森林面積は約80,000ヘクタールで、大阪府に次いで国内で2番目に小さいです。都市のイメージが強い東京都ですが、その面積の約40%が森林です。

東京都の森林は、多摩地域と伊豆・小笠原諸島の2つのエリアに分かれています。日本百名山に選ばれた標高2,017mの雲取山(くもとりやま)から、亜熱帯性気候の小笠原諸島まで、さまざまなタイプの森林が存在します。

森林の約70%は多摩地域の西部に集中しています。面積は、約53,000ヘクタールです。

また、多摩地域の人工林率は58%で、全国平均の46%を上回っています。一方、伊豆・小笠原諸島の人工林率は13%で、大部分が天然林です。

(参照:東京都産業労働局「東京都の森林・林業(令和5年版)」)

多摩地域の森林は都心から近く、都民にとってリフレッシュやレクリエーションの場として重要です。しかし、その維持管理には課題が存在します。

以下では、森林率の高い多摩地域が直面する人工林の現状と課題、現在おこなっている取り組みについて解説していきます。

多摩地域の「老齢化した人工林」!森林再生の重要性

多摩地域の人工林は、「20年未満の若い森林が非常に少ない」のが特徴です。林齢構成は、1~20年が2%21~40年が3%、41年以上が95%と、偏った林齢構成となっています。

人工林のスギやヒノキの伐採適齢期は、40年~50年です。多摩地域の人工林のほとんどは、伐採しても良い時期をむかえています。その中でも、60年以上の森林が60%を占めているため、20年もの間、適切な対応ができていないのです。

多摩地域の人工林の面積は、約30年前と比較すると、ほぼ変わらず約30,000ヘクタールです。しかし、森林の「蓄積量」は、約3倍に増加しています。

森林の蓄積量が増加しても高齢の森林は、若い森林に比べて、二酸化炭素の吸収量が「3分の1に減少」するため、地球温暖化対策への効果を十分に発揮できません。

また、人工林蓄積量の75%がスギの木であるため、花粉症の問題が深刻です。

花粉の飛散量の増加の背景には、森林の蓄積量の増加が関連しています。

地球温暖化や花粉症の問題に対応するためには、「若い森林構成へと変えていく」ことが重要です。

多摩地域の人工林は、昭和35年には年間1,500ヘクタール以上の植林が行われました。しかし、ここ20年間の年間平均植林は、昭和35年と比べると約40分の1の面積です。

このままの状態では、ますます「森林の老齢化」がすすみ、現在の問題が一層深刻化する恐れがあります。

(引用:東京都産業労働局「東京都の森林・林業(令和5年版)」)

そのため、東京都は森林の老齢問題対策として、多摩地域の森林に対応できる林業技術や、整備方法について、根本からみなおし始めました。

急峻な多摩の森林!技術開発と実地検証による「低コスト林業」

多摩地域の森林は、急峻な地形、小規模で分散しています。林道近くの森林整備はできても、奥山は整備するにも作業が難しくコストが高いです。その結果、放置されて荒廃がすすんだ森林が増加しました。

放置された森林は、光が入らないため下層植生が育ちません。森林の役割である水土保全機能が低下し、良質な木材の生産ができなくなります。

この問題を解決するため東京都は、平成26年に林業技術開発コンサルタントや大学、研究機関、林業事業所や林業機械メーカーへ『低コストでできる林業技術の開発』を委託しました。翌年の平成27年から実地検証を行い、優先度の高い施業技術から実行しています。

「持続可能な多摩産材の供給体制」を構築するには、低コストで伐採から運搬までできる技術を開発することが不可欠です。また、林業作業の現場検証やシステムの改善をし、技術導入の投資後の回収計画も明確化しました。

(引用:東京都産業労働局「低コスト林業(伐採搬出作業、間伐作業)のイメージ」

そして、林業経営者の「収益向上」のために、令和4年からは、デジタル技術を活用したシステムや先進技術を検証し、先進技術の機械の導入支援や開発支援を行っています。

また、東京都は「多摩産材の利用拡大」を推進するために、「木材の需要情報を管理するシステムの構築」を目指しています。このシステムにより、多摩産材を使用した建築物や住宅、公共施設、二次製品の供給と需要を効率的にマッチングさせ、スムーズな木材供給を実現します。

さらに、出材予測を活用して苗木の生産を適切に管理し、流通の効率化の実現にむけて取り組んでいます。

都会の騒がしさを離れた東京都の森林は、自然の静寂と美しさが広がる貴重な場所です。その保護と活用には積極的な管理と地域社会の協力が欠かせません。

未来を見据えると、東京都の地形に適した最新の林業技術の普及が不可欠です。これにより、多摩産木材の持続的な利用が可能となり、地域経済の発展に貢献することが期待されます。

これらの取り組みが実現すれば、東京都の森林は豊かな資源としてだけでなく、持続可能な地域発展の基盤となるでしょう。

【参考文献】

  1. 統計データ「東京の森林・林業」/ 東京都の森林・林業 令和5年版pdf

「https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/ringyou/project/date/」

東京都産業労働局(2024_5_15)

  1. 東京の森林・林業の現状と課題

「https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/plan/nourin/mori/pdf/moriplan3.pdf」

東京都産業労働局(2024_5_15)

  1. 東京の森林の現状

「https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.lg.jp/nourin/tokyo/history/shinrin/shinrin/」

東京都産業労働局(2024_5_15)

  1. 都道府県別森林率・人工林率(令和4年3月31日現在)「https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/genkyou/r4/1.html」

林野庁(2024_5_15)

  1. 樹種別・林齢別炭素吸収量

「 https://www.shinrin-ringyou.com/ondanka_boushi/tanso_kyusyu.php」

森林・林業学習館(2024_5_15)

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