私たちの身のまわりには、ストロー、スプーン、容器など、便利な使い捨てプラスチック製品があふれています。
しかし、その多くは使われたあと、リサイクルされずに廃棄され、やがて海へと流出しています。
EUの報告によると、海岸に打ち上げられるごみの約8割がプラスチックであり、その半分以上が「使い捨てプラスチック」製品だとされています。
こうした背景から、EUは2019年に「特定プラスチック製品の環境影響削減指令(SUP指令)」を採択しました。
本記事は、EUの「使い捨てプラスチック指令」に関する概要や、与える影響について詳しく解説します。
EU の「使い捨てプラスチック指令」とは?

EU の「使い捨てプラスチック指令」)は段階的に進められており、「禁止」「削減」「回収・再利用促進」という3つの柱で構成されています。
以下の表は、その代表的な法制度をまとめたものです。
| 名称 | 施行時期 | 主な内容 |
| 使い捨てプラスチック指令(SUP指令) | 2019年採択/2021年7月施行 | 特定の使い捨てプラスチック(ストロー、カトラリー、プレートなど)の販売禁止、EPR制度の義務化 |
| 包装・包装廃棄物規則(PPWR)改正案 | 2024年採択 | 包装全体にリサイクル可能素材の使用義務、再利用率目標などを導入予定 |
| 拡大生産者責任(EPR)制度 | 各国で導入進行中 | 製造者が製品の回収・処理・費用負担を担う仕組み |
| 表示・マーキング規則(EU2020/2151) | 2020年制定 | 生理用品や飲料カップなどへの「プラスチック含有マーク」表示を義務化 |
このように、EUは使い捨てプラスチック製品の販売を「禁止する」だけでなく、企業・消費者の行動をリサイクル中心 に変えるための多層的な仕組みを整えています。
規制対象となる主な製品とその理由
では、使い捨てプラスチック指令ではどのような製品が対象となっているのでしょうか。
EUが禁止や制限の対象にしているのは、次のような「代替素材が容易にある」製品です。
[使い捨てプラスチック指令による対象製品]
- プラスチック製ストロー
- フォーク・スプーン・ナイフなどのカトラリー類
- プラスチック製プレートやマドラー
- 綿棒のプラスチック軸
- 発泡スチレン製の食品容器・カップ
- 産業用以外の風船用のプラスチック棒
- オキソ分解性プラスチック(見かけ上は分解するが、実際にはマイクロプラスチックを残す素材)
これらは日常的に使われ、短時間で廃棄される一方、自然分解されにくく、海洋汚染の主因となっています。
一方で、すぐに代替できないもの(例:医療用プラスチック)は対象外とされ、段階的な見直しが進められています。
EU各国での導入状況と進展
使い捨てプラスチック指令は2021年7月に加盟国で適用が始まりました。
現在、フランス、ドイツ、イタリア、オランダなど多くの国で次のような取り組みが進められています。
[使い捨てプラスチック指令 : 欧州での取り組み]
- 店舗でのプラスチック製カトラリー・ストローの提供禁止
- テイクアウト容器の紙・木製代替への転換
- 製品パッケージへの「プラスチック使用表示」義務
- メーカーへの回収・リサイクル費用負担(EPR制度)
また、フランスでは2023年から、レストランでの再利用容器の導入が義務化され、ドイツではボトルキャップを本体と一体化する設計(分離防止)を2024年から完全導入しました。
各国のスピードは異なりますが、全体として「使い捨て文化からの脱却」が進んでいます。
2024年以降の新たな動きと目標

EUはさらに一歩進んだ施策を進めています。
2024年4月に採択された「包装・包装廃棄物規則(PPWR)」改正案では、以下のような新基準が導入される予定です。
[包装・包装廃棄物規則による新基準]
- すべての包装材にリサイクル可能素材を使用
- PETボトルの再生プラスチック使用率:2025年までに25%、2030年に30%
- 使い捨てホテルアメニティ(ミニシャンプー等)の禁止
- 再利用可能な飲料カップ・容器の提供義務化(飲食店・カフェなど)
これらは単なる環境対策ではなく、「資源の再循環による新たな経済モデル」への転換を狙っています。
EUの政策では「廃棄物=資源」とみなし、リユースやリサイクルを産業の一部に組み込むことを目指しているのです。
使い捨てプラスチック指令の効果と課題
EU環境機関の試算によると、使い捨てプラスチック指令の導入によって、海岸ごみに含まれるプラスチックが最大25%削減される可能性があるとされています。
また、リサイクル産業の拡大によって新しい雇用も生まれ、環境と経済の両立をめざす「グリーン経済」が進展しています。
しかし一方で課題もあります。
[使い捨てプラスチック指令の課題]
- 各国の実施速度や厳しさに差がある
- 代替素材のコストが高い
- 中小企業の対応負担が大きい
- 消費者の意識変化が追いつかない
このような問題を乗り越えるため、EUでは技術開発への補助金や消費者向け教育キャンペーンも同時に展開しています。
日本やアジアへの影響と学ぶべきポイント
現在、EUが中心となって進めるSUP指令やPPWRですが、日本やアジア諸国でも次のような施策が有効だとしています。
まず、制度設計の段階から「生産者責任」と「消費者行動変化」を両立させることが大切です。
その上で、以下のような取り組みが求められます。
[日本・アジア諸国で推奨される取り組み]
- 拡大生産者責任制度(EPR)の導入や強化
- リサイクル可能な素材の技術開発支援
- 再生プラスチックの品質基準や表示制度の整備
- 国際的な環境基準への適合(輸出産業への対応)
- 消費者への啓発・教育の充実
これらの取り組みは、EUのように「禁止」だけでなく、「支援」や「共通ルール作り」を同時に進めることが、実効性を高めるポイントだといえます。
プラスチック指令後の変化を比較
EUが現在進めている、使い捨てプラスチック指令による変化は以下の内容になります。
[使い捨てプラスチック指令 : 実施前後の比較]
| 比較項目 | 規制前(2020年以前) | 規制後(2021年以降) |
| ストロー・カトラリー | プラスチック製が主流 | 紙製・木製・金属製など代替素材へ転換 |
| 容器包装 | 使い捨て中心 | 再利用・返却型が増加 |
| メーカーの責任 | 一部で任意対応 | 費用負担・回収義務が法的に明確化 |
| 消費者の選択 | 利便性重視 | 環境配慮型商品を選ぶ流れが拡大 |
| 行政・自治体の役割 | 啓発中心 | 回収システム・規制監視を担う |
このように、使い捨てプラスチック指令は社会全体の仕組みを変えつつあります。
消費者・企業・行政がそれぞれの立場で責任を分担し、「循環」を意識した行動が求められています。
今後の展望 ―「禁止」から「共創」へ
EUでは今後、「禁止」にとどまらず、企業と消費者が協力して資源を循環させる「共創型モデル」への移行が進むと見られています。
たとえば、再利用可能な包装を複数企業で共有したり、リサイクル素材を用いた製品に「環境ラベル」をつけて市場価値を高めたりする取り組みが広がっています。
一方で、日本でも2022年に施行された「プラスチック資源循環促進法」により、企業の自主回収や再資源化が進み始めています。
EUの経験を踏まえれば、今後は「設計段階からリサイクルを前提にするモノづくり」への転換がカギとなるでしょう。
まとめ
今回は、本記事は、EUの「使い捨てプラスチック指令」に関する概要や、与える影響について詳しく解説しました。
EUの使い捨てプラスチック指令は、単なる環境対策ではなく、「経済と社会を持続可能に再設計する試み」です。
禁止だけでなく、企業・市民・行政が一体となって「資源を循環させる仕組み」を築くことが目的です。
日本をはじめとするアジア諸国にとっても、これは重要なヒントとなります。
地域や文化の違いはあっても、「一度きりで捨てない社会」を目指す方向性は共通です。
EUの挑戦を足がかりに、世界全体でプラスチックとの新しい付き合い方を模索する時代が始まっています。イン規制への対応は避けて通れない課題となるでしょう。
参考情報】
欧州委員会(European Commission)「Directive (EU) 2019/904」
URL : https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2019/904/oj/eng
概要レポート 第 13 回:EU の使い捨てプラスチック指令
URL : https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/attach/pdf/platform-251.pdf
環境省「EUにおける使い捨てプラスチック規制の概要」
URL : https://plastic-circulation.env.go.jp/about/pro/gorika
JETRO「EU理事会、使い捨てプラスチック製品禁止法案を採択」
URL : https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/05/53834b4b467aaafb.html

