欧州連合(EU)では7月、「持続可能な製品のためのエコデザイン規則」が新たに施行されました。
この規制は衣類や付属品の廃棄を制限するもので、EU域内で流通するすべての製品が対象となります。
このためEU域外の業者や販売店にも今後影響が出ると言われています。
本記事では、サステナブルを標準化する欧州の「エコデザイン規制」について解説します。
サステナブルを標準化する試み

EUで7月18日に施行されたエコデザイン規制(ESPR)は、資源・エネルギー効率に優れた製品供給を目指しています。
また、EU全域が対象となることから、サステナブルな製品が手に入りやすい環境に変わることが予想されます。
一方でサステナブル製品を標準化することで、供給側のハードルが高くなる懸念も広がっています。
エコデザイン規制は全商品対象に
ESPRはEU加盟国に義務付けされ、食料品、医療品を除く全商品がエコデザインの要件を満たすように定められています。
その目的は、衣料や家電製品、家具など対象となる製品の修理やリサイクルを行う際に「再利用が簡単なデザイン」を強要することです。
エコデザイン規制の環境基準
じつはひとつの製品が環境に与える影響のおよそ8割は、デザインによって決まると言われています。
ESPRで必要とされる環境基準には、以下の内容があります。
【ESPRの環境基準】
- 製品の耐久性
- エネルギー消費を削減
- リサイクル素材含有率の向上
- 再製造・リサイクルの促進
- 製品を持続可能にするための情報提供
このように欧州のESPR立案者は、2020年よりスタートした「循環型経済行動計画」のベースとなる政策を実現してきました。
消費者にデータ提供も実施
ESPRを展開する際に、消費者へのデータ提供も併せて実施される見込みですが、具体的には以下の内容が予定されています。
- デジタル製品パスポート(DPP)
DPPとは製品がもつ持続可能性を示した情報提供を行うもので、原材料の供給からリサイクルまでのライフサイクル全体えお表示することで、購入時の参考になるものが予定されています。
現在、詳細は未定ながらQRコードを使用し情報データベースにアクセスできる見通しです。
一方で提供するメーカー側は、DPPデータをサプライヤーから入手し、提供することになります。
おもに環境インパクトやコンプライアンス文書など、従来開示さえる機会の少なかった情報が提示されます。
エコデザイン規制の見通し

しかしESPRが正式に施行されたものの、実際に適用されるのはかなり先の話しとなります。
EUが作業計画を始めるのは2025年3月を予定しており、ESPRの要件を含む最初の製品概要が発表されます。
これらの要件が製品に採用される見通しは2026年末、その後の適用は2027年以降の予定です。
メーカー・業界側の対応
ESPRはEU域内のほぼ全ての製品に適用されるため、流通に関わる製造メーカー・輸入、卸業者・小売店・販売業者など世界中の企業、業界に影響を及ぼすでしょう。
また、優先度の高い製品カテゴリーとして繊維製品・家具・マットレス・タイヤ・洗剤・塗料・潤滑剤などが最初の対象となる予定です。
これらのメーカーは、構造や耐久性、リサイクル率向上のためのデザインや設計を見直し、生産過程や製造法を見直すケースもあるでしょう。
このようにメーカーや業界側では、ESPR基準に合わせた製品作りが新たにスタートすることになります。
アパレル・繊維業者で懸念される注意点
ESPRでとくに注意すべき業界として、ファッション・アパレル業界があります。
その理由として、ジャケットやTシャツなどの製品が売れ残った際に、廃棄することが禁止されるためです。
この規制により削減される繊維製品の無駄は年間およそ1億トンにも上ると言われています。
リサイクルを前提とした救済措置
エコデザイン規制は、例えば破損品、売れ残りの品を捨てることは廃棄として禁じられます。
一方でリサイクルを目的に廃棄される物品については適用されません。
この背景には、過剰生産して余った在庫を単純に廃棄してしまうことや、原材料をリサイクルに廻す際に多くのエネルギーが必要になるためそれぞれの無駄を削減する目的があります。
今後業界の概念を変える可能性も
ESPRで対象となる多くの業界では、既存の製品の扱い方や概念が大きく変わる可能性が高いと言えます。
余剰製品の廃棄やリサイクルを前提としたデザイン、仕様に変更することは、従来のビジネスモデルや運営手法、価値観を見直す必要があります。
エコデザイン規制が適用、実施される時期は少し先になりますが、製造メーカーや卸、小売など全ての業者に浸透するまで時間が掛かるため、早期にESPRへの対応を検討すべき段階に来ていると言えるでしょう。
EUは世界的にも大きな市場のひとつのため、規制に合わせた製品、流通作りをスタートしていきましょう。
まとめ
今回は、サステナブルを標準化する欧州の「エコデザイン規制」について解説しました。
新たに施行されたエコデザイン規制は、従来の製品作りを見直し、持続可能性の観点から消費者が物や情報を選ぶ時代にシフトするきっかけとなる可能性が高いことを解説しました。
今後EUから全世界へ波及する可能性も考慮し、新たな製品開発、販売を検討していきましょう。
【参考文献】
EUの「サステナブルな製品を当たり前に」――EUが施行した「新エコデザイン規則」が企業に与える影響とは「
https://www.sustainablebrands.jp/sp/news/us/detail/1223550_2140.html」(参照)

