日本の取り組み

「サスティナブル」から「リジェネラティブ」へ!地球環境を維持するだけじゃなく、どう再生するか?(後編)

中編では、「リジェネラティブ農業」がリジェネラティブ企業経営に繋がっている点についてご説明しました。

再生を目的としたリジェネラティブとは、土や水、植物、動物が有機的に繋がることで、環境を健全な状態に戻す活動であることを説明しました。

後編は、実際に「リジェネラティブ」に取り組んでいる企業について説明していきます。

『パタゴニア』地球を守る革新的なアウトドアブランド!

パタゴニアは、アウトドア用品や衣料品の製造・販売を主要な事業としている、アウトドアブランドの1つです。

石油に依存せず、リサイクル素材を使い、製品を修理し長持ちさせることで、地球への負担を減らしています。10年以上前から無農薬、無化学肥料に着目した食品産業に参入しています。

「国は農業とともに成長し、土壌は生命の基盤をつくる。」地球環境問題をつきつめた時、私たちの暮らしの変化、食の変化の問題にいち早く気が付き、行動しました。

パタゴニアは、発展途上国で、安価な食料を、大量に生産することが、環境汚染につながり、ひいては気候変動の原因になると考えました。

過剰な農薬や肥料の使用、安価な肉を生産するための資源、輸送や加工に多くのエネルギーを使います。これらの要因が重なることが、労働環境、気候変動への問題へとつながっているのです。

問題の解決には、食料自給率をあげていき、自然と共同に生きていくこと。

その結果、土壌の健康、動物福祉、労働環境、農家にたいして最善の「リジェネラティブ・オーガニック農法」にたどり着きました。

中編でも説明しましたが、「リジェネラティブ農業」は、土壌中に二酸化炭素を多く固定化することができます。世界のすべての農用地が、リジェネラティブ農業を行うことで、世界中の二酸化炭素排出量より多くの二酸化炭素を、土壌中に隔離できると試算できているのです。

パタゴニアはリジェネラティブ・オーガニック農法で自社栽培している「コットン」を育てています。その理由としては、その当時、世界で使われているほぼすべての「コットン製品」の生産過程で、ホルムアルデヒドなどの有害な化学物質が検出されたからです。

当時オーガニックコットンの流通量は全体の1%程度しかなく、調達が難しい状態でした。そこでパタゴニアはオーガニックコットンの栽培を一からはじめた結果、自社製品を100%オーガニックコットンへと移行したのです。

パタゴニアのミッションは、『最高の製品を作り、環境に与える不必要な悪影響を最小限に抑える。そしてビジネスを手段そして環境危機に警鐘を鳴らし、解決にむけて実行する』ことです。

地球の未来を真剣に考える企業として、その活動は、心からの熱意と責任感に満ちあふれています。具体的な取り組みを通じて、地球の未来に向けた模範となる存在となっているのです。

地球環境回復へ!ELEMUSのリジェネラティブなビジネスモデル 

合同会社ELEMUS(エレムス)は、単に製品をつくるのではなく、リジェネラティブ企業として、地球環境を回復するための事業を推進しています。

ELEMUSの製品の1つに、サスティーモ®という、天然プラスチック樹脂である漆の樹液と木粉だけで製造した100%植物由来の成形体があります。

サスティーモ®の炭素固定量を、共同研究している国立大学で測定した結果、1kgのサスティーモから約60%の炭素が測定されました。つまり約2kgの二酸化炭素を大気中から削除して、製品として使用することができるのです※1。つまり植物が固定化したCO2を樹脂製品として利用することで、自然の炭素循環から長期間隔離することが可能となる素材です。

サスティーモ®の特徴として、ABS樹脂と同等程度の強度を持ちながら、抗菌・抗ウイルス性も兼ね備えた、現代のウイルス問題に対応することもできます。

(写真:サスティーモ®)

サスティーモ®をつくるためにELEMUSでは大学の研究機関と漆の種子発芽に世界で初めて成功し、毎年愛知県内の中山間地に約3000本の漆の苗を植えています。漆の木を育成する過程では、土壌の健康を回復させ、二酸化炭素を吸収する目的もあります。

山に植物を増やすことで生物が増え、土壌が健康になります。土壌が健康になると、土壌中の炭素固定量を増加させることができるからです。

土壌の健康を回復させることは、リジェネラティブの観点から、地球環境を回復させるための手段として重要なのです。

またサスティーモ®で使用する木粉は、戦後日本が放置し森林問題になっている間伐材や、建築資材の端材など、製品として価値がないと判断された木材を微粉砕して利用することで、サスティナブル(持続可能な循環型)ビジネスモデルを実現しています。最近では木粉と非石油系ゴム原料を利用した、ビーガンレザー「フォレストレザー」の開発など、環境問題の出口に繋がる商品開発を積極的に行っています。

漆の樹液と木粉のみでつくられたサスティーモ®は、使えば使うほど、地球環境が回復していくリジェネラティブな素材です。

合同会社ELEMUSは、日本のパタゴニアを目指し、リジェネラティブ企業として、100年後の子供たちが安心・安全に生活するために、地球環境の回復にむけて尽力しています。


 現代に生きる私たちの生活で、石油由来原料とは切っても切り離せなくなっています。反面、現代の原因不明の病気は、少なからず石油由来成分の影響を受けていると思います。見た目はキレイな農薬まみれの野菜、流行りの石油まみれの洋服など、身体にとって有害な物質は、私たちの口や皮膚から入りこんでいます。引いては、それらが地球環境を悪化させています。

 第一次産業革命以降、人類は便利と快楽を得るための産業革命を経て現代に至っていますが、人類にとって、本当の快楽とは何でしょうか?AIや遺伝子操作を含めた第五次産業革命を迎えた現代において、破壊を前提とした産業革命ではなく、再生を前提とした「リジェネラティブ」を第六次産業革命として定義した場合、その快楽には、継承や伝承、遺伝といった、意味づけを持ち得るものだと思っています。農業の一次産業、製造の二次産業、販売サービスの三次産業を通じて、六次産業化という言葉が生まれました。リジェネラティブを前提とした六次産業革命を日本が主導することで、世界に先駆けた環境先進国になりえると考えています。

日本人はリジェネラティブに近い精神を持っています。今後日本企業が発展するためには、この領域をさらに発展させることで、世界にイニシアチブを発揮できる領域だと、言い切れます。

環境と成長、再生と経済。今後日本企業の成長領域の中で、リジェネラティブを軸とした企業経営は、切り札となりえます。

※1:0.6kg×44/12=2.2kgCO2

【参考文献】

  1. オーガニックコットンを求めましょう:パタゴニア 「https://www.youtube.com/watch?v=vqToGP7QZZo&list=PLr2rULGef2sIc--bJ_d6hw2qa_HjSOay1&index=7」Patagonia JP(参照:2024-3-22)
  1. 私たちの取り組み(とその理由):「なぜ、リジェネラティブ・オーガニックなのか?」第3部 「https://www.youtube.com/watch?v=ZS4zfjIakmY」Patagonia JP(参照:2024-3-22)
  1. Patagonia サプライヤー職場行動規範「https://www.patagonia.jp/static/on/demandware.static/-/Library-Sites-PatagoniaShared/default/dw54778d26/PDF-JP/Patagonia_CoC_Japanese_02_13.pdf」Patagonia JP(参照:2024-3-22)
  1. パタゴニア、未来を語る 新井敏記(2023)「patagonia 50Years Special Issue」コヨーテ ㈱スイッチ・パブリッシング
  1. リジェネラティブ・オーガニックで目指す日本の食と農業の根源的な転換「https://www.patagonia.jp/stories/regenerative-organic-for-japan/story-111626.html」patagonia(参照:2024-3-22)

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