日本の取り組み 森林問題

愛知県岡崎市の森が育む漆の未来!「三河漆」の復興と新たな挑戦(中編)

2023年、徳川家康がうまれた愛知県岡崎市の山に、漆の苗が植えられました。

これは「三河漆」(みかわうるし)の種を発芽させたものです。通常、漆の発芽率はごくわずかな5~10%ほどです。

しかし、驚くべきことに、鳥取大学と合同会社ELEMUSの共同研究により、漆の種からの発芽率が90%に向上しました。この素晴らしい成果をうけ、発芽させた「三河漆」の種は苗まで育てあげ、岡崎市の山に植えられることになりました。


実は、このような取り組みは、近年日本の各地で徐々に増えつつあるのです。

その理由について、解説していきます。

日本の漆文化再興へむけて!静岡の国宝と地域活動の連携

2015年文化庁で、重要文化財建造物は、原則100%国産漆をつかって保存・修復しなければならないと決定しました。しかし、国内の漆の生産は、岩手を中心とした東北地方に集中しており、国内消費量のほとんどが中国産の漆です。

国産の漆の樹液を採取するには、漆の木(ウルシノキ)そのものが足りません。

そのため、全国各地で漆栽培と、その土地の文化遺産を守るための取り組みが行われはじめました。

静岡県では、オクシズ「漆の里協議会」が地域全体で団結し活動しています。漆を栽培するだけでなく、「漆の学校」として講座を開催し、地元の皆さんに漆について深く理解してもらうための活動にも取り組んでいます。

また、静岡県は素晴らしい漆文化の象徴である「久能山東照宮」があります。江戸初期の代表的建造物である権現造、総漆塗、極彩色「御社殿」は国宝に指定されており、その存在は圧巻です。

「久能山東照宮」には楼門(ろうもん)を含む多くの重要文化財があります。オクシズは地域の重要文化財への保護活動に尽力し、漆にまつわる伝統や技術の継承を推進しています。漆文化を深く理解し、その価値を共有することで、静岡の漆に誇りと愛着が一層育まれています。

(写真:久能山東照宮 御社殿)

地域ごとの取り組みが拡大し、国産漆の生産量が増えることで、日本の素晴らしい伝統素材・技術を継承することができます。それが現代にいきる者の役割なのでしょう。

「中山間地域」の力で漆の未来を築く!岡崎市の挑戦

岡崎市は、広大な森林が6割を占めています。現在、高齢化率が上がり、人手不足のため、山の管理が難しくなっている地域もあります。

そこで、「岡崎漆プロジェクト」を通じて、岡崎市内の山を貸し出してくれる人を募集しました。

そして、「中山間地域」の人々の協力を得て、岡崎市の山で漆の植栽が始まりました。「中山間地域」では、管理できていない放置林や、雇用不足における経済的な問題が地域の発展に対する障害となっています。

この「岡崎漆プロジェクト」を通じて、山の管理から、漆の育成、加工、製品化に至る一連の過程を、中山間地域の人々に協力してもらいます。

この新たな雇用の機会を提供することは、「中山間地域の活性化」と「経済成長」につなげられる有力な解決策です。

漆産業を発展させることは、地域資源を最大限に活用しながら、持続可能なビジネスモデルを確立することができるのです。


後編は以下から閲覧いただけます。

【参考文献】

  1. HP「https://okushizuurushinosato.com/」オクシズ漆の里協議会(参照:2024-1-24)
  1. ウルシ種子の休眠打破条件および発芽特性の解明 今井駿輔・稲木孝至・小原 淳 ・小串重治 ・衣笠利彦(2021)「https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsrt/47/1/47_99/_pdf/-char/ja」日緑工誌(参照:2024-1-24)
  1. HP「https://www.toshogu.or.jp/」久能山東照宮((参照:2024-1-26)

お気軽にお問い合わせください

-日本の取り組み, 森林問題