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欧州の森林破壊防止法とは?「木材と環境」最新事情を解説!

欧州では2024年、世界初の森林破壊に関する製品の輸入を禁止する「森林破壊防止法」が実施されました。

一方世界的なエネルギー価格の高騰を受け、欧州では木材を燃やし暖をとる世帯が急増しています。

本記事では欧州の森林破壊防止法の内容や、木材と環境に関する最新事情を解説します。

世界初の「森林破壊防止法」とは?

森林破壊

欧州で施行された世界初の試み、「森林破壊防止法」とはどのような法律なのでしょうか?

まずは特徴についてご紹介します。

  • 「森林破壊に関わらない」証明を求める

欧州議会が承認した欧州森林破壊防止法では、森林破壊に関する農産物・製品のEUへの輸入が禁止されることが決まりました。

企業がEU市場で製品を販売する際、例えば森林が非合法に伐採された土地などで材料が栽培されていないことを証明する必要があります。

また、これらの原材料について「検証が可能な情報」を提供することも併せて義務付けられました。

  • さまざまな製品が対象に

この法律は現在EU市場で販売されている日用品・食品などの製品から森林破壊を防止する環境への取組みの一環として始まりました。

対象品目は以下の内容です。

  • 牛肉・大豆・パーム油・ココア・コーヒー・チョコレート・ゴム・木材・皮革・家具など。

この法案はEU加盟国の承認後に施行され、大企業は18ケ月、中小企業は24ケ月の猶予期間後に義務付けされることになります。

仮に違反した場合、売上の最大4%を上限として罰金が課せられることがアナウンスされています。

森林破壊防止法の世界的な影響について

森林破壊防止法が制定されることで、世界的にどのような影響があるのでしょうか?

ここではその効果や問題点についてご紹介します。

温室効果ガス削減の狙い

現在、世界で発生する温室効果ガス排出のおよそ10%は森林破壊が原因とされています。

欧州で施行される森林破壊防止法では、温室効果ガスを削減し、脱炭素化の促進や生物多様性を守ることに繋げる目的があります。

途上国から反発の懸念も

この法律に対し、EUと貿易を行う途上国などから反発も起きています。

例えばコーヒーの一大産地であるブラジル「ABAG」はこの流れを激しく非難しています。

大豆・コーヒー・牛肉などの主要生産国である同国は、森林伐採を規制する一方、生産に関わる一部の地域を合法化し伐採を許可していると主張。

このように途上国による反発により、今後貿易摩擦に発展する可能性が懸念されています。

欧州の「木材・環境」に関する最新情報

暖炉

欧州では森林伐採を防ぐ森林破壊防止法が施行される一方、国内の「木材・環境」に関する問題点も明らかになっています。

再生可能エネルギーの現状

EU(欧州連合)で消費されている全エネルギーのうち、再生可能エネルギーは2021年時点で約20%と2005年の10%から大幅に増えています。

これはEUが掲げる「2050年までに炭素排出量を実質ゼロにする」目標に向け、更なる取組みを進めていく必要があります。

しかし再生可能なエネルギーを得る際、木を燃やす必要があることが新たな矛盾を生み出しています。

バイオエネルギーとしての木材の需要

現在EUで使用されている再生可能エネルギーのうち、約60%がバイオエネルギーと言われています。

バイオ=生物由来の有機物ですが、おもな原料は農業廃棄物、燃料用の作物、林業などで採れる木材があります。

これらのバイオマスは、およそ70%が企業や住宅で「暖をとる」ために使用されています。

空前の木材への需要の高まりと背景

欧州の冬は寒く、最近ではロシアによるウクライナ侵攻の影響から燃料価格は高騰しています。

このため安価で安定供給が可能な木材の需要が急速に伸びているのです。

しかし薪を製造・流通する業者が大量発注を請ける一方で、森林が荒らされるなど違法な伐採が増えているとしてNGO団体が警告する事態が発生しています。

  • 法改正と問題の背景

今回の問題の背景には、RED(再生可能エネルギー指令)という法令で一部の木製品を「再生可能な燃料」として補助金を支給している現在のEU制度が関係しています。

このため、多くの再生加納エネルギーが化石燃料の価格を下廻ることになり、木材の需要を助長するきっかけとなっていることが指摘されています。

  • 代替エネルギーへの投資案も

こうした森林破壊に繋がる報酬の替わりとして、欧州では住宅の断熱化とヒートポンプの導入資金を増やす代替え案が検討されています。

ヒートポンプを導入することで、石油・ガスを燃やす暖房システムからエネルギー需要を減らす効果が見込めると言われています。

また、化石燃料やバイオマス産業から、太陽光発電や風力・地熱発電などへ補助金をシフトすることで、木を燃やす以外の再生エネルギーを生み出す方法について検討する議論も起きています。

これらのアイデアは、より環境負荷の低いエネルギーを最安値で手に入れる仕組み作りが急務であることを意味しています。

このようにEUの脱炭素化に向けた取組みは、製造物や再生エネルギーなどさまざまな視点から森林破壊を防ぐ方法を考える必要性があることが分かります。

現在、脱炭素化に向けた環境負荷の少ない施策が、EUをはじめとした世界各国の取組みに求められていると言えるでしょう。

バイオエネルギーの有効活用を

再生可能エネルギーは地球上の資源を有効活用し、カーボンフリーな社会を目指す取組みとして本来重要な役割を担っています。

またバイオエネルギーを活用し、環境負荷の少ない製品開発も始まっています。

合同会社ELEMUSは、愛知県三河地域で原木や木片を利用して木粉を製造し、バイオプラスチックの開発を行うなど、海洋プラスチック問題の解決に向けた事業を展開しています。

地域で入手可能な原木や木片、または間伐材の有効活用をお考えの際は、ぜひELEMUSにご相談ください。

まとめ

今回は、欧州の森林破壊防止法の内容や、木材と環境に関する最新事情を解説しました。

EUが策定する森林保護に向けた法案や政策の現状、問題点をご紹介しました。

欧州ではバイオエネルギーを有効活用し、製品やエネルギー効率を高めるとともに環境負荷の少ない政策が求められています。

日本でも脱炭素化に向けた取組みを進めていきましょう。

【参考文献】

森林破壊に関連する製品の販売・輸入を禁止 EU「森林破壊防止法」を世界初で承認「https://eleminist.com/article/2671」(参照)
エネルギー価格の高騰により、木材を燃やして暖をとる人々が欧州で急増している「https://wired.jp/article/eu-forests-energy-crisis/」(参照)

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