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『過剰包装』問題!日本の現状と世界を比較(後編)

前編では、「過剰包装」問題に対処するための手段として、「ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment)」という手法を通じて、製品の環境負荷を客観的に評価する方法についてご紹介しました。

その後、日本の環境政策の遅れや課題についても触れましたが、消費者の意識の低さや法の執行不足、産業構造の影響や政府の対応の遅れが、その主な要因であると述べました。

そこで、今回はEU(欧州連合)の過剰包装の対策について、焦点を当てるなかで、日本が学ぶべきことについて検証してみたいと思います。

EUが包装廃棄量の増加に警鐘!包装規制を厳格化

EUでは、包装材と包装廃棄物に関する規制が存在しながらも、その効果が、あまり出ていないという現状があります。

リサイクル率は上昇しているにも関わらず、包装廃棄量がリサイクル量より速く増加。年間一人当たり、約190kgの包装廃棄物が発生し、過去10年間で包装廃棄量は約25%も増加しました。

そこで、2024年3月4日、欧州連合議会と欧州合理事会は、「持続可能な包装材や包装の削減を義務づける修正案」に暫定合意しました。

特に問題視されているのが、プラスチックと紙の使用量です。「プラスチックの40%、紙の50%」が包装材として使用されています

このままでは、2030年までにプラスチックの廃棄量は、約46%増加する見込みです。

そのため、今回の法案では、新しい規制を幅広く導入しました。持続可能な循環型社会への道を切り拓くために、不可欠な一歩となりました。

EUの新法案!使い捨てプラスチック禁止と再利用の義務化

EUの「持続可能な包装材や包装の削減を義務づける修正案」は、すべてのパッケージがリサイクル可能であること。そして、有害物質の使用を最小限に抑え、不要な包装の削減や、リサイクルされた素材の活用を促進することです。

そのため、「2030年までに5%、2035年までに10%、2040年までに15%」の包装廃棄物の削減目標が設定され、特にプラスチック包装の削減が求められています。

そして2030年から、特定の使い捨てプラスチック包装が禁止されます。

具体的には、「加工前の生鮮果物や野菜の包装」、カフェやレストランの「食品や飲料の包装」、「個別に包装してある調味料」も対象に含まれます。

さらに、「ホテルの洗面用品」や空港の「スーツケースのシュリンク包装」など、個包装も禁止となるのです。

また、「永遠の化学物質」といわれるPFASの食品接触包装での使用を禁止にしました。PFASは、人工的に作られた有機フッ素化合物のことで、環境中や人体でも分解されず、蓄積されます。

水や油をはじくため、フライパンや防水服、食品の包み紙など、身近なものに使われているのです。日本の農林水産省も、「危害のある物質」としてリスク管理を行う対象に位置付けています。

また、「アルコールやノンアルコール飲料」の再利用可能な包装の目標を、2030年までに少なくとも10%と設定しました。

さらに、レストランやカフェなどでは、リサイクルや詰め替え可能な形で、水道水を提供するように奨励することが義務付けられました。

またテイクアウト店は、消費者に自身の容器を持参するオプションを提供することが義務化され、2030年までに製品の10%を再利用可能なパッケージで提供するよう努める必要があります。

また、2029年までに使い捨てのペットボトルと金属製の飲料容器を「年間90%以上、個別に回収する」目標をかかげているのです。

この目標達成のため、デポジットリターンシステム(DRS)の導入を検討しています。

デポジットリターンシステム(DRS)とは、購入者が、「使い捨て容器」にデポジット(預金)と商品代を支払い、使用後に「使い捨て容器」を返却することで、デポジットが返金されます。このシステムは、容器の回収を促進するためにかかせません。

しかし、2026年に80%以上の回収率を達成し、90%の回収目標を含む実施計画を提出した場合は、デポジットリターンシステム(DRS)の導入が免除されます。

これらの規制は、EUが「包装材や包装の廃棄物」に関する環境問題に、積極的に取り組む一方で、世界中の企業や国に、持続可能な包装の重要性を再認識させるものです。


日本も関わるEUの包装規制! 

EUの包装規制は、日本にも関係があります。なぜなら、日本からEUへ輸出される製品にも適用されるからです。

つまり、日本の企業はEUの規制に従う必要があります。そのために、「過剰包装」の見直しや、「リサイクル可能な素材」の使用へと変えていかなければなりません。

ただし、この規制は単なる法令だけでなく、未来の世代に美しい地球を残すという私たちの使命でもあります。

日本もEUと同じく持続可能な未来を目指すことが重要です。

EUの規制は世界中の包装業界にも影響を与えます。企業は環境保護と持続可能性に注力し、環境に配慮した包装材料の選択、設計を行う必要があります。

日本は、この取り組みに遅れをとっています。「過剰包装」に対する対策が不十分であり、EUのように包装の削減に向けて、積極的な取り組みを見習わなければなりません。

日本がこの取り組みに参加し、「包装の削減」と「リサイクルの促進」に力を入れることで、地球環境への貢献が実現されます。

私達企業や流通側の〇〇しなければいけない、という考え方と、消費者側の〇〇していて当たり前、という考え方自体が、もしかしたらこういった取り組みを阻害している要因かもしれません。

製造側であり消費者である私たち一人一人から、〇〇していて当たり前、という考え方を少しづつ変えることで、次の世代に優しいモノづくり企業へ深化できるのかもしれません。

【参考文献】

1、EUにおけるより持続可能な包装のための新しい規則に関する協定「https://www.europarl.europa.eu/news/en/press-room/20240301IPR18595/deal-on-new-rules-for-more-sustainable-packaging-in-the-eu」欧州議会(参照:2024-4-21)

2、輸出先国における容器・包装に関する規制「https://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_process/k_packaging.html」農林水産省(参照:2024-4-21)

3、包装:EU理事会と議会は、包装をより持続可能なものにし、包装廃棄物を削減するための協定を締結しました「https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2024/03/04/packaging-council-and-parliament-strike-a-deal-to-make-packaging-more-sustainable-and-reduce-packaging-waste-in-the-eu/
欧州理事会(参照:2024-4-21)

4、農林水産省が優先的にリスク管理を行う対象に位置付けている危害要因についての情報(有害化学物質)「https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/hazard_chem.html」農林水産省(参照:2024-4-26)

5、食品安全に関するリスクプロファイルシート(化学物質)「https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/risk_analysis/priority/attach/pdf/hazard_chem-3.pdf
農林水産省(参照:2024-4-26)

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