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欧州が取組むバイオエコノミー政策と脱炭素化に向けた新技術

欧州では生物由来のバイオマス、バイオテクノロジーを活用し、持続可能な社会を目指す「バイオエコノミー」の概念が主流となっています。

バイオエコノミーでは従来の化石燃料を緩和し、再生可能なエネルギーを軸にさまざまな分野での取組みが始まっています。

本記事では、欧州が取組むバイオエコノミー政策や、脱炭素化に向けた最新技術を解説します。

バイオエコノミーとは

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バイオエコノミーとは、生物由来の資源(バイオマス)やバイオテクノロジーを活用し、持続可能な社会を目指す概念です。

20世紀の石油経済との対比で、21世紀型の経済概念として使用される場合もあります。

欧州では2005年頃から政府が主導し、バイオエコノミー実現に向けた政策が進められています。

2015年に国連が発表したSDGs(持続可能な開発目標)では多くのバイオエコノミーに関連する分野が設けられました。

欧州のバイオエコノミー政策

欧州では世界に先駆けてバイオエコノミー政策に取組んで来ました。

ここではおもな動きをご紹介します。

  • 2005年

EUが主導するリスボン戦略会議にて、2010年までの成長目標として「知識を基盤としたバイオエコノミー」政策が発表されました。

その後ドイツ・ベルギー・デンマークなどの議長国が同分野に関しての進捗・政策を発表し、継続した研究、取組みが続けられています。

  • 2014年

官民共同での「新バイオ産業共同事業」を設立。

BBI-JUと呼ばれるこの事業では、2020年までの実用化に繋がる大規模プロジェクトの開発に着手しました。

2014-2020年の7年間で総額37億ユーロを投資するプロジェクトでは、旗艦・実証・研究イノベーション・コーディネーションの4部門に分けられ、研究・開発が行われました。

素材開発での研究成果

BBI-JUではバイオ事業の素材開発に於いて実用化に繋がる研究成果が出ている分野もあります。

例えば従来ペットボトルなどに使用されるPETと比較し、耐熱性・バリア性に優れたPEF(ポリエチレンフラノエート)が商業生産を実現する旗艦プロジェクトを発足しました。

また、EXILVAと呼ばれるナノセルロースの事業化プロジェクトでは、ノルウェーやオランダの製紙・日用品メーカーが加わるなど実用化に向けた研究開発を行っています。

ドイツではバイオエコノミーの実用化も

ドイツでは日常の暮らしの中でバイオエコノミーの実用化を感じることができます。

例えばミュンヘン空港のカフェではプラスチック製のストローを廃止し、トウモロコシや紙の原料にシフトしました。

また別のファーストフード店では、プラスチック製の食器を木製に切り替える店舗も出て来ています。

これらの製品が普及することで、化石燃料から精製されるプラスチックが山や海の汚染を防ぐことに繋がるのです。

脱炭素化に向けたバイオエコノミー技術

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生物由来のバイオ技術を用いた研究開発は、製品・素材・原料などさまざまま分野で行われています。

ここではいくつかの素材、研究についてご紹介します。

環境に優しいプラスチック

外見はプラスチックそのものに見えるPLAと呼ばれるバイオプラスチックは、トウモロコシや芋、サトウキビなどの原料から作られる「ポリ乳酸」で製造されています。

従来の化石燃料から作られるプラスチックとの違いは、堆肥に埋めるとおよそ1週間ほどで分解され、土に還るのです。

しかし分解の際、CO2は発生しますが原料となる植物はCO2を吸収する性質があるため、排出量は実質ゼロと考えることが可能になります。

  • ゲノム(DNA)解析での研究も

バイオエコノミーを活用したDNAの遺伝子工学に於いても分子レベルでの研究が始まっています。

例えばスイスの製薬大手Roche社の関連企業、米Foundation Medicineでは、ゲノム解析によるがん治療の米食品医薬品局で初の承認を得ました。

この他ゲノム解析の分野では、心臓病・血液病の治療薬を研究、開発が進んでいます。

  • バイオは微生物の分野にも及ぶ

従来の化石燃料で精製されたプラスチックは、分解されずに海に流出する「海洋プラスチック問題」が顕著ですが、既存のプラスチックを分解可能な微生物の開発に繋げることも可能になっています。

このようにバイオエコノミーは、医療や食品、微生物に至るさまざまな研究により、従来不可能とされていた技術を実現する成果が生まれつつあります。

持続可能な社会を目指した、バイオエコノミー経済圏を目指した開発が、EUでは実践段階に入っているのです。

日本のバイオエコノミー技術を

バイオエコノミーの国内での取組みは2017年頃から戦略策定が行われています。

特にSDGs目標13に掲げられている「気候変動に具体的な対策を」では、海洋・山間部の汚染を防ぐ施策が求められています。

合同会社ELEMUSは、愛知県三河地域で原木や木片を利用して木粉を製造し、バイオプラスチックの開発を行うなど、海洋プラスチック問題の解決に向けた事業を展開しています。

地域で入手可能な原木や木片、または間伐材の有効活用をお考えの際は、ぜひELEMUSにご相談ください。

まとめ

今回は、欧州が取組むバイオエコノミー政策や、脱炭素化に向けた最新技術を解説しました。

バイオエコノミーは、従来の化石燃料からバイオ技術を用いた変革期にあることをご紹介しました。

世界に先駆けてさまざまな取組みを行っている欧州をはじめとして、今後更なる環境施策が求められる現状があります。

2050年までのSDGs目標必達に向けて、各国が連携し脱炭素化を目指していきましょう。

【参考文献】

欧州が主導するバイオエコノミー政策と世界的なイノベーションの動き「https://www.mitsui.com/mgssi/ja/report/detail/1225809_10674.html」(参照)
環境保護のための日独バイオエコノミー戦略「https://www.dwih-tokyo.org/ja/2021/04/28/bioeconomy-strategies/」(参照)

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