私たちの暮らしに欠かせないプラスチック。
しかしその便利さの裏で、廃棄物の増加や海洋汚染といった深刻な環境問題が世界的に浮き彫りになっています。
こうした課題に対処するため、日本では2022年に「プラスチック資源循環促進法」が施行されました。
一方で、EU(欧州連合)ではより早い段階から包括的な資源循環政策が進められています。
本記事では、日本の法律の特徴やEUとの違いを、具体的な企業や自治体の取り組み事例とともに詳しく解説します。
プラスチック資源循環促進法とは?

正式には「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」と呼ばれ、2022年4月から施行されました。
この法律の目的は、プラスチック製品の「設計」「製造」「使用」「回収」「リサイクル」までのすべての段階において、資源の循環を意識した取り組みを促進することにあります。
[主な対象とポイント]
- 対象製品:スプーン、ストロー、ハンガー、アメニティなど、12品目の使い捨てプラスチック製品(コンビニ、ホテルなどが主な提供者)
- 事業者の責任:削減目標の設定、代替素材への切り替え、回収体制の整備など
- 自治体の役割:独自の分別・回収施策、地域のリサイクル体制の構築を支援する
この法律は、従来の「使用後に回収・焼却」といった偏った処理方針を見直し、「排出抑制」や「設計段階での工夫」にも焦点を当てているのが特徴です。
EUの取り組み:より厳格で包括的なルール
EUでは日本よりも一歩進んだ政策がすでに導入されており、特に「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」を基盤とした規制が目立ちます。
例えば、2019年には「使い捨てプラスチック禁止指令(SUP指令)」が採択され、特定のプラスチック製品が販売禁止となりました。
[EUの特徴]
- 禁止対象:プラスチック製のストロー、カトラリー、綿棒、マドラーなど
- 容器包装への責任:生産者拡大責任(EPR)の導入により、製造者が回収とリサイクルの費用を負担
- 数値目標の明確化
- 2025年までにPETボトルの再生材使用率25%
- 2029年までに飲料ボトルの回収率90%
このように、EUは「禁止・義務・数値化」という強力なアプローチで、使い捨てプラスチックの排除と資源循環を加速させています。
日本企業の取り組み:身近な企業も動き始めている
日本では、法施行を受けて多くの企業が自主的な取り組みを進めています。
たとえばコンビニ業界では、スプーンやフォークの有料化、素材の見直しが始まっています。
[セブン-イレブン・ジャパンの事例]
2022年より、木製スプーンや再生プラスチック製カトラリーを一部店舗で導入。年間削減目標は、グループ全体で7,000トンのプラスチックの使用削減。
[花王の例]
詰め替え用パウチ容器の利用促進とともに、モノのマテリアル化(単一素材化)を進め、再資源化しやすい設計に変更。
このように、国内では「リサイクルしやすい製品設計」や「素材の代替」に積極的に取り組む企業が増えています。
しかし、EUのような強制力のある制度ではなく、企業の自主努力に依存している面が強いのが日本の現状です。
EU企業の取り組み:ルール遵守とイノベーション
EUでは、法律によって明確な責任が課されているため、企業の取り組みも進んでいます。
[コカ・コーラ・ヨーロッパ(CCE)]
・2022年より、スペイン・オランダなどで100%再生PETボトルを導入。
・リフィル型ボトルやリユース容器の販売も拡大中。
[ユニリーバ(本社:イギリス)]
・2025年までに新規プラスチック使用量を半減する目標を設定
・詰め替えや再利用可能な容器の普及に向け、スーパーでリフィルステーションの実証を展開中。
このようにEUでは企業が法的責任を負っているため、革新的な取り組みや設備投資が活発に行われています。
日本・EUでの自治体の取り組み比較

日本国内やEUの地域、自治体でのプラスチック資源に対する取組みをご紹介します。
[日本の自治体:独自の工夫が光る事例]
熊本市
- 全国に先駆けて「分別+資源化」に注力。市民向けの分別アプリを導入し、理解促進を図る
- プラ容器の回収率は全国平均の約1.4倍
神奈川県藤沢市
- 小学校と連携したリサイクル教育プログラムを展開。
- 未来世代の意識づけに取り組む
日本国内では先進的な取組みが進められている一方、地域間で対応のばらつきや、焼却処理への依存が残っている点が課題といえます。
[EUの自治体:焼却より再資源化を優先]
ドイツ・フライブルク市
- ごみの分別回収率は70%超。生ごみ・紙・金属・プラをそれぞれ細かく分類
- 市民への啓発活動や、「ゴミ削減ボーナス制度」など、住民参加型の政策が特徴
スウェーデン・マルメ市
- 使用済みプラの再生材利用率が50%以上
- プラスチック包装を義務的に分別・回収し、サーキュラー型ビジネスモデルと連携
EUではプラスチックの再利用に関して、法制度と自治体施策がうまく連携しており、「埋立・焼却ゼロ」に向けた動きが加速しています。
日本の課題とこれからの展望
日本のプラ新法は「できることから始める」柔軟な仕組みですが、以下のような課題も見えています。
[現在の主な課題]
- 規制に強制力や罰則がないため、企業間で対応にばらつきがある
- 再生プラスチックの需要や品質が安定しないことから、企業が使いにくい
- 市民や事業者の間で、制度の理解や認知が十分に浸透していない
今後は、EUのように企業の責任範囲を明確化し、ルールとインセンティブをバランスよく組み合わせる制度設計が必要です。また、自治体や企業、消費者が一体となって、より実効性のある循環システムを築いていくことが求められます。
[日本とEUの違いをデータで比較]
| 項目 | 日本 | EU |
| リサイクル率(プラスチック) | 約25%(2021年)※熱回収含む | 約42%(2022年)※再資源化のみ |
| プラスチック包装廃棄量 | 約83万トン(2021年) | 約1,500万トン(EU全体) |
| 法的規制の強さ | 促進型(努力義務中心) | 務型(罰則あり) |
| 法的規制の強さ | 促進型(努力義務中心) | 義務型(罰則あり) |
| 焼却処理割合 | 約60%以上 | 多くの国で20%以下に抑制 |
まとめ
今回は、この記事では、日本のプラ新法の内容をわかりやすく説明しながら、EUの取り組みとの違いを比較しました。
日本の「プラスチック資源循環促進法」は、初の包括的な法制度として一歩前進したものの、EUに比べるとまだ柔らかいアプローチです。
EUのように「禁止・義務・数値目標」を明確に定め、企業や自治体が主体的に取り組む土壌を整えることが、今後の課題といえるでしょう。
最近では日本国内でも企業・自治体の創意工夫が始まっており、持続可能な社会への兆しは確実に見え始めています。
未来に向けて私たち一人ひとりができるアクションを進めていきましょう。
【参考文献】
「プラスチック資源循環促進法とは?概要と対象の12品目をわかりやすく解説」
https://www.yamamoto-mrc.co.jp/column/industrial/1526/

