ファストファッションが世界的に流行する現在、EUでは2023年に持続可能な製品作りを目指す「エコデザイン規制」が暫定合意されました。
この内容は売れ残った衣類・付属品の廃棄を規制するもので、アパレル業界の今後が不安視されています。
本記事では、EUの「エコデザイン規制」の概要や、アパレル業界の課題について解説します。
EUの「エコデザイン規制」とは?
2023年12月、EUで暫定合意された「エコデザイン規制」とは、アパレル関連の業者が売れ残りの衣類・付属品を廃棄することを禁じるものです。
これに先立って2020年フランスでは「循環経済法」が施行され、企業が売れ残った衣類を焼却・廃棄することが禁止されました。
この法律はアパレル業界でも前例のない取り組みとして、世界で注目されて来ました。
衣類の無駄を無くす取り組み
EU、フランスが取り組むこれらの取り組みは「持続可能な製品」作りを目指すもので、背景には昨今のファストファッション台頭による大量廃棄を防止する狙いがあります。
それではこうした法律が施行された後、売れ残りの衣類は今後どのように処分する必要があるのでしょうか?
廃棄以外の処分方法とは?
従来のアパレル製品は売れ残った衣類を格安で販売し、それでも残った在庫は焼却処分されて来ました。
しかし2000年代以降、地球温暖化防止の観点からCO2排出量を減らす取り組みが推奨されるようになりました。
このためアパレル業界に於いても「衣類を廃棄すること」は社会の流れに逆行することになり、反対されるようになります。
しかし2000年以降はファストファッションの世界的ブランドがメジャーとなり、市場で消費される以上の格安製品が出廻るようになってしまいました。
新たな処分の選択肢
このようにファストファッションが人気を集める現在、フランスでは衣類の売れ残りは「リサイクル」または「寄付」を前提に処分することを義務付ける新たな選択肢が実践されています。
現在では増加の一途を辿る売れ残りの衣類を減らすには思い切った政策が必要であることの裏付けでもあります。
世界に求められる達成条件
一方でこの政策を実行する根拠として2030年までの数値目標を「経済活動で生じる廃棄を5%、家庭での廃棄を1人あたり15%削減」する目標を提示。
企業と併せて一般消費者にも廃棄を減らす取り組みを推奨しています。
これは持続可能な社会作りを目指す脱炭素化社会に向けた一例として、日本も同様の試みが求められています。
果たして実現は可能か?
フランスでの事例は具体的に実現は可能なのでしょうか?
- 寄付する際の問題点
例えば「寄付」を前提として売れ残りの在庫を無料で提供すると言っても、「売れ残り品が趣味に合わない」となれば受け取り手も困惑するでしょう。
また、受け取り先が見つかった場合は輸送手段のコストを算出し、誰が負担するのかも決める必要があります。
- リサイクルの問題点
素材を分子レベルで分解し、精製した後に化学合成・再製品化する「ケミカルリサイクル」。
これは異素材を除去し高品質のリサイクル品を生産でき、また石油由来の新品に近い品質を実現できます。
しかしリサイクルの工程が複雑で、処理プロセスの高コストになるというデメリットがあります。
EUが掲げる明確なビジョン
EUが掲げるアパレルでの2030年ビジョンは、以下の内容となります。
- リサイクル課題の克服
耐久性があり、修理可能でリサイクル可能な製品が主流となること。
また、大部分がリサイクル繊維から作られ、有害物質を含まず、社会的権利を尊重して生産されること。
- ファストファッションへの否定
ファストファッションは過去のものとなり、消費者は高品質の製品を長く使うことができるようになること。
- ビジネスとしての普及
利益を生むリユースとリペアサービスが広く普及すること。
また、競争力をもち、柔軟で革新的なテキスタイル産業において、生産者が製品の全バリューチェーンに責任を持つこと。
- 廃棄を最小限に抑える
使い捨てではなく循環型の衣類が標準となり、リサイクル能力が十分に確保され、焼却と埋立が最小限に抑えられること。
日本の現状と期待
日本はフランスと似た規模と衣料品のライフサイクルを持つが、衣類廃棄のうちリサイクル・リユース率は現在35%になります。
また、サステナブル市場への進展を見せており、2022年には自民党がCO2排出透明性向上やリサイクル促進の政策提言を行いました。
今後アパレル分野で日本企業がフランス市場進出を目指す場合、変化する消費者意識と規制に対応する必要があります。
一方で環境対策を通じてブランドイメージ向上と長期成長が期待できます。
まとめ
今回は、EUの「エコデザイン規制」の概要や、アパレル業界の課題について解説しました。
EUやフランス政府が取り組むエコ政策は、今後の世界的なファッション業界の流れとなる可能性を解説しました。
持続可能な社会を目指すCO2削減の方向性は、ますます加速していく傾向があります。
今後もEUを始めとした環境先進国を参考に、日本独自の環境への取り組みを進めていきましょう。
【参考文献】
EUの「エコデザイン規制」 アパレル業界が取り込むべき課題とは「https://www.fashionsnap.com/article/2024-03-11/recycle/」(参照)
ファストファッションを標的に: フランスの法案はファッション業界を揺るがすか?「https://codo.jp/fast-fashion-law-jp/」(参照)