近年、生物由来の資源・有機物を活用したバイオマス研究が進み、新たに炭を始めとする「バイオ炭」が注目されています。
バイオ炭は、二酸化炭素を減らすSDGsの目標「気候変動に有効な対策を」に該当すると言われていますが、一体どのような素材なのでしょうか?
本記事では、バイオ炭の特徴や、カーボンニュートラルに向けた取組みについて解説します。
バイオ炭の特徴とは?
バイオ炭とは、生物をもとにした有機物(バイオマス)を炭にしたもので、原料は木・竹・もみ殻・家畜などの排泄物などがあります。
・二酸化炭素を削減できる
バイオ炭の特徴として、二酸化炭素を土壌に長期間閉じ込めることができるため、地球温暖化の原因となる二酸化炭素排出量を削減することができます。
また、植物は光合成で二酸化炭素を有機炭素に変えることができます。
この時、有機炭素は貯蔵されますがこれを炭化させると安定した炭素となり、土壌や農作物の品質向上に繋がります。
- バイオ炭の定義
気候変動に関する情報を扱う、IPCC(政府間パネル)の定義では、バイオ炭は「燃えない水準の酸素状態で、350℃以上の温度でバイオマスを加熱し、生成される固形物」を指します。
バイオ炭が環境対策に注目される理由
バイオ炭はSDGsでの脱炭素化を目指す環境対策としても非常に注目されています。
その理由として、以下の内容があります。
- 地球温暖化防止の対策
- 農用地の土壌・作物の改良
- 森林資源を再生する
このようにバイオ炭は環境問題の改善に役立つと言われていますが、実際の効果について確認してみましょう。
地球温暖化防止の対策
バイオ炭を地球温暖化防止の対策として活用する方法が注目されていますが、じつは日本では昔から行われていた農地対策でもあります。
- 堆肥や燃料事情の変遷
じつはバイオ炭が注目される以前から、生物由来の有機物として日本では「堆肥」が使われてきました。
堆肥とは、で落ち葉やし尿、草などの有機物を土に混ぜ畑を肥やすことができます。
しかし最近では畑を耕す際は化学肥料を使用するようになり、堆肥などの侑樹物を使用する機会も減ってしまいました。
また、おもに燃料として使用されてきた薪は石油など化石燃料に変わりました。
このため間伐材などの普及が途絶える地域も多く、森林資源の荒廃も問題となっています。
- バイオ炭が新たに注目される
2019年、新たに定められた二酸化炭素を減らす取り組みであるCDR(Carbon Dioxide Removal)に於いて、「バイオ炭を活用した農地施用」がJ-クレジット(政府公認の環境施策)の対象となりました。
このためSDGsのカーボンニュートラル社会に向けた素材として「バイオ炭」が注目されるようになりました。
一方国際的な研究機関でもバイオ炭を活用した農地開発についての論文が増えるなど、環境面からの期待が高まっています。
- 温暖化対策としての効果に期待
地球温暖化の原因となる二酸化炭素の排出量は現在も増え続けています。
また、二酸化炭素の排出量増加による気温の上昇・干ばつ・集中豪雨などに対しSDGsでは「気候変動に有効な対策を」という目標を掲げ、世界共通の課題として取り上げています。
- 炭素を貯蔵する働き
バイオ炭で使用する木材・竹には本来「炭素」が含まれています。
この炭素は放置しておくと微生物などの働きにより分解され、二酸化炭素となり大気中に放出されることが分かっています。
しかし木材や竹を炭化したバイオ炭に変え、土壌に混ぜることで炭素を土の中へ貯蔵し、大気への放出を削減する効果があります。
- 国際的な枠組みでも採用される
2019年度からは、国際的なCO2排出・吸収報告書においても農地でバイオ炭を使用することが、温室効果ガス削減の取り組みのひとつとして新たに採択されました。
さらに国ごとに取り組む二酸化炭素の削減・排出量をクレジット化する「J クレジット制度」にも、バイオ炭は2020年から採用されています。
さらに2022年9月には、3度目の「バイオマス活用推進基本計画」が採択され、カーボンニュートラルを目指す取り組みとして「バイオ炭」が取り上げられています。
農用地の土壌・作物の改良
アジア地域では農地として利用できる土地面積も少なく、一方で多くの人を養う必要があります。
このため稲作中心の農業が主流となり、草やし尿、家畜の排せつ物などから作る堆肥が土壌の品質向上に役立てられてきました。
じつは堆肥を作る際、木炭など炭材も古くから土壌品質を向上することができる素材として利用されてきました。
バイオ炭の土壌品質向上への効果には、以下の内容があります。
・保水・透水性を高める・保肥、ミネラル成分の補充・保温効果・水質、土壌の浄化・微生物の繁殖など
このようにバイオ炭は炭素を貯蔵する以外にも、土壌に必要な微生物が繁殖し、収穫量が増すなど土壌・作物の品質向上へと繋がることが分かっています。
ただし、過剰に使用すると土壌のph値が上昇し過ぎるなど作物に悪影響となる場合があるため、農林水産省はバイオ炭使用の目安を提示しています。
森林資源を再生する
じつは日本は、国土の約70%を森林が占める「森林大国」でもあります。
しかし海外木材の流通の陰で国内の木材需要が減少していることもあり、全国で森林の荒廃が進むようになりました。
その結果、近年では土砂崩れや洪水といった甚大な自然災害を引き起こす要因にもなっています。
このため、国内の森林資源を健康な状態に再生するため「間伐」を行う必要性が高まっています。
各地で採れた間伐材は、バイオ炭として活用することで森林資源を再生することにも繋がるでしょう。
このようにバイオ炭は、環境対策を始めさまざまなメリット・効果があることが分かります。
バイオ炭を有効活用することで、二酸化炭素を減らし更なる気候変動を食い止める手段としての運営が求められています。
カーボンニュートラル社会に向けて
地球温暖化を防ぐ、カーボンニュートラルな社会に向けてバイオ炭は有効な対策として認識されています。
一方で間伐材など国内の木材資源の活用もSDGsの目標達成には重要な要素と言えるのではないでしょうか?
合同会社ELEMUSは、愛知県三河地域で原木・木片を「木粉」に加工し、バイオプラスチックなど海洋プラスチック問題解決に向けた事業を展開しています。
お住まいの地域で採れる原木や木片、間伐材の有効活用をご検討の際は、是非ELEMUSにご相談ください。
まとめ
今回は、バイオ炭の特徴や、カーボンニュートラルに向けた取組みについて解説しました。
バイオ炭は、農耕民族の知恵として日本では昔から活用されていたことをご紹介しました。
バイオ炭がもつ特性は、カーボンニュートラルを目指すSDGsの目標達成に向けた有効な対策であることがご理解頂けたのではないでしょうか?
バイオエネルギーを有効活用し、次世代の社会作りを目指していきましょう。