前編および中編では、放置される竹林の問題点や放置される竹林が増加した原因について解説しました。後編は、これらの問題に対処するために不可欠な「放置される竹林」の効果的な駆除の方法について、ご紹介していきます。
「放置される竹林」問題を解決する!3つの駆除方法
1、竹をひたすら伐採
竹は再生力が強く、年2回7年間継続して伐採することで、ほとんど駆除することができます。
竹の特徴として、『隔年で豊作と凶作を繰り返す』ため、生えてきた竹が小さくて少なくても油断はできません。翌年には、再び多くの竹が生えてくる可能性があります。
竹林の定期的なみまわりと管理が必要であり、根気よく伐採を続けることが、竹を弱らせるうえで効果的です
●伐採した竹を搬出しない場合の問題点
伐採した竹を、山から運ぶことが難しいことがあります。たとえば自動車道から遠く運べない竹林での作業や、高いコストがかかる場合です。
竹を伐採しても搬出しない場合は、少なくとも10~12年以上は、竹の伐採を続ける必要があります。
竹を搬出しない場合は、一部の竹を支柱として、そこに伐った竹を棚状に集積し、腐朽するまで放置します。放置している間、竹を集積した場所から新しい竹が生え、根が広がっていくため、かなりやっかいなのです。
集積した竹が腐朽して、体積がへるまでに10~12年間はかかります。そのため、少なくとも10~12年以上は、伐採を続ける必要があるのです。
(参照:国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)
2、竹に除草剤を注入
地上に生えている竹を100%枯死させる効果的な手段は、除草剤による駆除です。
竹の枯死除草剤は、「グリホサート系除草剤」と「塩素系除草剤」があります。
竹稈(竹の茎)に電動ドリルで穴をあけ、薬剤を注入し、穴を布テープなどでふさぐと、約半年で竹が枯死します。
枯死した竹は倒れる危険があるため、迅速に伐採することが重要です。
【竹稈に薬剤を注入する手順】
(参照:国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)
竹の伐採後、同時に行うことができる手法として切株の駆除があげられます。
切株も電動ドリルを使用して穴を開け、薬剤を注入し、穴をコルクや木の栓でふさぐことで竹を駆除することができ、竹稈の有効活用が可能となります。
【竹の切株へ薬剤を注入する手順】
(参照:国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)
3、土壌に除草剤を散布
もっとも時間短縮ができる方法は、土壌に除草剤を散布する方法です。
竹の伐採直前に、土壌に除草剤をまくことで竹の再生をおさえることができます。
竹を伐採後に散布すると、伐採した竹や枝葉に除草剤がついてしまい、竹が利用できなくなります。また土壌に除草剤が付着しないため、効果がでにくくなります。
土壌への除草剤の使用は、環境への影響があると懸念されがちです。
「塩素系除草剤」は、土壌散布後1か月ほどで河川への影響がなくなりました。
「グリホサート系除草剤」の使用には慎重さが求められます。なぜなら、その成分が1年後になっても微量検出されたからです。
しかし、竹がなくなり林床に太陽の光が入るようになったことで、土壌侵食を防ぐ下層植物が育つなどの良い変化もあります。そのため、植物の生態系にあえる影響を考慮しながら、除草剤の利用を慎重に検討することが重要です。
(参照:国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所)
コスト面で比較すると、竹の伐採作業工程もいれて、竹稈へ除草剤注入、土壌散布が比較的低コストでした。しかし、コストで決めるのではなく、竹林の形状や状況によって最適な駆除方法を選択することが重要です。
伐採した竹の有効利用が難しいと言われるなかで、竹を効果的に活用している企業が存在します。伐採した竹を環境に配慮した方法で再利用する企業の一例として、ご紹介します。
竹の持続可能な活用:岡崎市のELEMUSが示すバイオプラスチック革命
愛知県岡崎市の合同会社ELEMUSでは、自社工場で竹を小麦粉ほどの大きさに微粉砕加工することで、新たな活用方法を見出しています。
微粉砕した竹
岡崎市の竹林を整備するときに出た竹を微粉砕し、プラスチックとまぜることで、環境にやさしいバイオプラスチック素材が実現しました。
竹からできたバイオプラスチック製品
竹林の整備におけるこの取り組みは、廃棄される竹を製品にかえる持続可能な解決策となります。
竹の再生力を活かし、バイオプラスチック製品を通じて廃棄物を減少させ、新たな資源を生み出すことができる循環型のビジネスモデルです。
竹文化が失われつつある今、持続可能を重視した製品を提供することで、竹資源の有効活用に貢献しています。
竹の有効活用に再注目し、未来に続く美しい環境を築いていくために、竹に対する新たな価値を見つけ出すことが大切なのです。