世界的な問題解決に取り組むSDGsですが、最近では多くの企業が実践していることもあり、すっかりお馴染みになって来たのではないでしょうか?
しかし身近な環境レベルの取組みでは、環境先進国EUに見習うべきポイントが多いと言われています。
本記事ではSDGsに取り組むEU諸国の現状や、各国の事例・工夫をご紹介します。
SDGsに取り組むEUの現状は?
2015年に採択されたSDGs発足後、EU・ヨーロッパ諸国では様々な対策が進められるようになりました。
とくに最近は環境改善に向けた取り組みが多く実践されています。
プラスチック廃棄問題への対策
海洋汚染に繋がるプラスチック廃棄問題を改善する施策として、EU委員会では使い捨てプラスチックの流通を禁止する「特定プラスチック製品の環境負荷低減案」が可決されました。
これをもとにEU加盟国では国内の法改正を順次始めています。
- フランスでの取り組み
フランスでは2020年、新たに「循環経済法」を採択しました。
これは再生プラスチックなどリサイクルを2025年1月1日までに100%達成する目標と併せて、2040年までに使い捨てプラスチック包装の流通を全面禁止する目標が掲げられています。
- スペインでの取り組み
スペインでは2023年1月より、プラスチック課税を導入しました。
この税制は国内に流通する使い捨てプラスチックの容器・包装の製造メーカー、輸入業者を対象にプラスチック含有量キロ(1キロ)あたり0.45ユーロの課税を実施しています。
このようにEUではプラスチック削減に対し国ごとに施策を実施していますが、すでに2020年の時点で温室効果ガス排出量を1990年比 31%削減に成功しています。
持続可能な社会を目指すSDGs達成に向けた取り組みとして、参考にすべき事例といえるでしょう。
EU加盟国SDGsランキング
ヨーロッパEU諸国の2021年度SDGsランキングを見てみましょう。
1位 : フィンランド(↑前年4位)
2位 : スウェーデン(↓前年1位)
3位 : デンマーク(↓前年2位)
4位 : ドイツ
5位 : オーストリア
6位 : フランス
7位 : ノルウェー
8位 : チェコ
9位 : ポーランド
10位 : エストニア
上記は世界各国のSDGs達成ランキングですが、上位10ケ国はすべてEU諸国が独占する驚きの結果となっています。
達成度ランキングは毎年更新されますが、このようにEU諸国の環境への取り組みが評価される理由とは、どのような違いがあるのでしょうか?
EU諸国のSDGsへの取り組み事例
環境先進国が集うEU諸国のSDGs取組み事例を見てみましょう。
フィンランドでの取り組み
2021年度SDGs1位のフィンランドは、5年連続で「世界一幸福度が高い国」としても知られ、ヨーロッパの中でも希少な豊かな自然が残る国でもあります。
税制は他国と異なり消費税が24%と高いことも有名ですが、福祉・教育制度は充実しています。
- 介護手当を直接支給
介護手当を自治体が直接支給するシステムで、自治体が在宅で親族を介護する場合に「親族介護契約」を結び介護報酬が支給されます。
- 出産・育児サポート
出産から就学前の育児期間を無料でサポートする「ネウボラ」制度があり、育児費用の負担が少ない福祉制度で、多くの国民が利用しています。
政府が観光産業を支援
フィンランドでは「Visit Finland」と呼ばれる政府の観光局が観光地の保全運動を実施しています。
おもな項目は以下の内容です。
- 気候変動・自然保全への対策
- 地域の遺産を残す取り組み
- その土地の地産地消を支援
上記の内容に取り組む企業にSTF (Sustainable Travel Finland)認証を発行し、持続可能な旅行をサポートする仕組みを構築しています。
フィンランド企業のフードロス対策
フィンランドの首都ヘルシンキにある「nolla」では、食事サービスを通じたフードロス対策に取り組んでいます。
- 食材の余った部分を循環
食材を調達する際の製造業者には、野菜の余りや卵の殻。食肉の骨といった余った部分を農家に渡し、肥料などに利用する試みが実践されています。
- 野菜中心の食材を提供
ヴィーガン・ベジタリアン向けの料理を提供し、食材は可能な限り使い切り、余すことなく調理方法も工夫されています。
このようなフードロス対策を「ゼロウィスト」と呼び、小規模なフードロスの輪を広げていく先駆的企業として注目されています。
フィンランド国民の哲学
フィンランドではSDGsに取り組む以前、500年もの昔から伝承されている幸福への哲学があります。
その哲学とは「SISU」と呼ばれ、「逆境に対する決意」を意味する考え方を生活に取り入れているのです。
SISUを実践する、その一部をご紹介します。
- プライベートを充実する
仕事への集中力を高め、プライベートを充実させるため労働時間を平均で7.5時間、16時に退社する勤務体制を確保。
残業を極力しない取り組みが実践されています。
- 授業日数の少ない教育を
フィンランドの年間授業日数はおよそ1年の半分(約190日)と日本の8割(約230日)程度しかなく、勉強以外の生活を充実させる制度を実施しています。
このように企業、教育での制度を利用し仕事や勉強以外の読書やアウトドアなどプライベートも充実させる生活スタイルは、限られた人生の選択肢を増やす「SISU」哲学の実践と言えるでしょう。
スウェーデンでの取り組み
SDGs2021年度2位のスウェーデンは、二カ国後目の英語がトップクラスの習得率を誇り、福祉大国としても有名です。
環境施策ではリサイクル率99%とEU諸国の中でも圧倒的に厳しい制度を実践しています。
革新的なリサイクルシステム
スウェーデンのゴミ回収後の処理方法は大きく分けて3つの種類に分かれます。
その内容と割合は以下の通りです。
- 発電エネルギーに変換しリサイクル : 52%
- その他リサイクル : 47%
- 廃棄(埋立) : 1%
このように驚異的なリサイクル率ですが、ゴミを発電エネルギーに変換するゴミ発電は、ノルウェー・イタリア・イギリスなど他のEU加盟国から輸入し燃料にするほどの稼働率を誇ります。
また、変換された電気エネルギーはおよそ25万世帯の電気、100万世帯の暖房用に使用されています。
- 製造責任を徹底
ゴミを扱う際の法整備も整え、製造メーカーは自社製品の回収・リサイクル・廃棄に必要な費用をすべて負担する義務を負い、企業に対しての製造責任を追求しています。
スウェーデン企業のリサイクルへの試み
インテリア業界で世界的なシェアを誇る北欧家具・雑貨を扱う「IKEA」では、2030年までにすべての商品を対象にリサイクル・再生可能な素材に変更する目標を掲げました。
このうち、家具製作に必要な木材は現在99%以上が森林管理協議会から認証を受けたFSC材、リサイクル木材に変更済みです。
スウェーデン国民のリサイクルへの取り組み
徹底した国家・政府主導で実践されているゴミ政策は、国民の日々の生活にも活かされています。
例えば使用済みの瓶・缶をリサイクルするとお金やチケットに還元される「デポジット」制度はSDGs以前の199年代から導入されています。
現在では地域のスーパーマーケットなど至るところに回収機が設置され、リサイクルが国民レベルまで浸透しています。
一方ゴミや廃棄に関する教育も盛んで、家族で分別やリサイクルについて積極的に教える機会も多いと言われています。
また、生ごみを肥料にするコンポストを採用する家庭も多く、マンションやアパートでは住人同士が共同で行うケースも多い特徴があります。
ドイツでの取り組み
環境先進国ドイツでは、国家レベルでの取り組みとして「国家持続可能性戦略」政策を策定・実施しています。
分野別には電気事業において再生可能なエネルギー活用は年々上昇傾向にあります。
とくに最近のウクライナ情勢から、ロシアへのエネルギー資源依存への脱却を進めていて、2030年には再生可能なエネルギー比率を65%まで引き上げる計画を進めています。
ドイツ企業のSDGs対策
企業のSDGs対策も活発です。
自動車業界大手フォルクスワーゲン社は、2039年までにEV車種の販売販売シェアを70%まで引き上げることを約束しています。
一方同じく大手BMW車では、おもに内装部品の環境負荷削減を設定しました。
ドイツ国民レベルの取り組み
ドイツでは市内の移動の整備手段として、2022年「気候チケット」を販売し交通機関を格安で利用できるサービスを導入しました。
このサービスは日本円で1ケ月約1,300円で電車乗り放題の破格の価格で販売したところ、約5000万人が購入し、180マントンのCO2削減に成功。
結果ドイツ市内の大気汚染を7%削減しています。
このようにドイツでは、行政・企業・国民が一体となってSDGs達成に向けた効果が表れています。
フランスの取り組み
フランスのSDGsでの取り組みは使い捨てプラスチック禁止など環境対策と併せて、ジェンダーをはじめとした人権問題にも積極的に取り組んでいます。
- プラスチック汚染対策
2040年を目処に使い捨てプラスチックを全面禁止する目標を掲げ、リサイクルへ向けた取り組みを実施しています。
- 男女格差を是正する制度
SDGs発足前の2000年、選挙時の男女平等を目指す「パリテ法」が施行されました。
これは政党候補者が男女平等になるよう定められた法案で、候補者の男女差が2%を超えた場合、政党助成金が減額されるなどのペナルティがあらかじめ設定されています。
フランス企業のファッション戦略
フランスのアパレルブランド大手「エルメス」では、2021年にレザーに替わる素材としてきのこを主材としたバッグを発表。
バイオテクノロジーなど先端技術を素材開発に活かした取り組みが注目されています。
また、ルージュケースを繰り返し使用できるよう中身の詰め替え商品も登場するなどファッション業界でサスティナブルな戦略を採用しています。
フランス国民のフードロス対策
フランス国民は地域で採れた食材を購入する「地産地消」の意識が高く、海外のオーガニック食材より地元の食材を購入すると答えた方の割合は80%に昇る結果となっています。
また、CO2など温室効果ガス削減に向けた取り組みとして、ヴィーガン・ベジタリアンを実践し食肉の消費量を減らそうとする国民が増えていることも、環境意識向上のひとつとして注目されています。
このようにヨーロッパのEU諸国では、SDGs達成に向けた取り組みが実践されています。
政府・企業・国民が一体となって取り組む姿勢を日本も見習っていきましょう。
サスティナブル社会を目指して
SDGs達成への取り組みでは、行政・企業・国民が問題意識を共有し、地域ごとに実践できる改革を進めて行くことが大切です。
合同会社ELEMUSは、愛知県三河地域で原木・木片を「木粉」に加工し、バイオプラスチックなど海洋プラスチック問題解決に向けた事業を展開しています。
お住まいの地域で採れる原木や木片の有効活用をご検討の際は、是非ELEMUSにご相談ください。
まとめ
今回は、SDGsに取り組むEU諸国の現状や、各国の事例・工夫をご紹介しました。
ヨーロッパのEU諸国では、行政・企業・国民がそれぞれ環境への問題意識を共有し大きな成果を上げている事例を解説しました。
また、フランスではファッションや人権問題などサスティナブル社会を目指した素材開発、法整備を実施していることも印象的でしたね。
日本でも地域レベルで取り組める、SDGs達成に向けた取り組みを進めていきましょう。