最近、クマ被害が増加している背後には、環境問題が絡んでいます。
この問題に影響を与えている要因の一つとして、中山間地域の社会環境の変化があげられます。
中山間地域とは、平野の外側周辺から山間地にかけての地域のことです。
地形を活かした、農業や林業において重要な役割を担っています。
(画像:農林水産省HPより)
現在、中山間地域は『過疎化』や『高齢化』の問題をかかえています。
この問題が、クマ被害と大きく関わっているのです。
原因を詳しく解説していきます。
クマ被害の背後にある【環境問題】は、中山間地域の『過疎化』や『高齢化』が原因だった!その理由を詳しく解説!
中山間地域は、クマが住む自然界と、人間界の境界線にあります。
農業や林業が衰退したことで、過疎化がすすみ、高齢率が高くなったことで、クマにとって住みやすい環境に変わりました。
2004年環境省が、クマの生息域を調査(生息域:水色)。
2014年、日本クマネットワークが再度調査(拡大地域:赤色)したところ、四国を除く他の地域で、クマの生息域が拡大したことがわかりました。
(参照:環境省HP資料)
クマの生息域が拡大したことで、人間との生活圏が近づきました。
そして、クマが人間と遭遇する件数が増えたのです。
それでは、なぜ中山間地域の農業や林業が衰退したのでしょうか。
クマ被害の原因である、中山間地域の【農業】や【林業】が衰退したきっかけとなった出来事とは?!
中山間地域の人の多くは、地形を活かした農業や林業で生計をたてています。
近年50年間で、「農業従事者」「林業従事者」が2割へと激減。数十年の間に、「中山間地域」の社会環境が変わりました。
そのきっかけとなった原因は、
- 化石燃料や化学肥料が普及
- 森林資源を利用しなくなった
からです。
それでは、この2点について解説していきます。
1、化石燃料や化学肥料の普及
戦後、化石燃料や化学肥料が日本に普及したことで、中山間地域の人の生活が変化しました。燃料は、便利な化石燃料の石油や石炭、天然ガスにたより、薪や炭は衰退。
落ち葉などを利用した肥料も、化学肥料が普及したことで、使用されなくなってきたのです。
そのため、中山間地域の役割が減少し、経済的価値がなくなっていきました。
都市部へ仕事をもとめて人が流出したことで過疎化がすすみ、残った人は高齢になっていくため、体力のいる農業や耕地管理が難しくなってきたのです。
そして、耕作放棄農地が増加しました。雑草や害虫、ゴミの不法投棄などで農地は荒れ果て、クマが人を気にせずにエサを探せる環境へと変化しました。
2、森林資源を利用しなくなった
第二次世界大戦後の経済復興にともない、住宅や建築に使うための資材として木材の需要が増加し、人工林がつくられました。
しかし、安い外国産木材を輸入するようになり、日本の森林資源の利用が減少したことで林業の仕事が衰退していきました。人工林を管理しなくなった山は密生し、人の出入りが少なくなくなったことで、クマの生息域へと変化したのです。
これらの原因は、中山間地域の『過疎化』や『高齢化』を進行させました。
人は、便利さをもとめたことで、生活も効率的にできるようになり経済は発展しました。しかし、山と街をつなぐ役割の中山間地域の活性が衰退したことで、クマ出没が増加したのです。
地球環境問題がとりざたされている近年、私たちの生活を見直す機会ができました。
行政機関や民間企業、地域住民などの協力により、中山間地域の農業や林業は復活のきざしをみせています。しかし、数十年かけて変わった環境は簡単には戻りません。
現在もクマ被害は続き、地域の人々は警戒心を持ちながら日常生活を送っています。
安心して過ごせる未来のために、環境問題に取り組んでいかなければならないのです。