最近では脱炭素化を目指す環境に優しい素材として「ウッドプラスチック(WPC)」が注目されています。
おもに木粉とプラスチックから生成されるWPCは、従来の木材にない特性からさまざまな用途、市場に導入されて来ました。
本記事では、WPC(ウッドプラスチック)の特徴や用途、市場について解説します。
WPC(ウッドプラスチック)の特徴は?

木材とプラスチックの複合材料、ウッドプラスチック(WPC)にはどのような特徴があるのでしょうか?
WPCが注目される理由や特徴をご紹介します。
WPCが注目される理由
WPCは廃木材、再生プラスチックを活用できるため、廃棄物を削減できるメリットがあります。
一方で良質な木材(木粉)と併せることで、食器など衛生面に配慮した製品作りも可能です。
建築資材として使用する際は、環境負荷の少ない低VOC(揮発性有機化合物)として利用でき、デッキや外装材、家具やフローリングなど幅広い用途が期待されています。
WPCのメリット
WPCはシロアリなど害虫に強く、腐食耐性や湿気にも強いため、キッチンやバスルームなど水廻りの家具(キャビネットなど)に最適です。
また、紫外線や雨、化学物質への耐性も備えているため屋外での使用にも適しています。
さらにWPCは素材そのものを成形し使用でき、塗装も必要ありません。
他には生分解性があり、100%リサイクル可能なことから持続可能な環境に優しい素材と言えるでしょう。
WPCのデメリット
WPCは木粉を使用しますが、天然木と比べて外観の美しさに劣ることや耐熱性が低いデメリットがあります。
また、建築物を設計する際、現在の基準ではWPCは活用することが難しいケースが多いことが分かっています。
例えば衝撃に弱く、釘やビスなど留め具の打込みが難しいケースも多いためです。
その他、比較的新しい素材のため、他の素材と比べコストが高くなります。
WPC主要成分の割合
WPCは「木材プラスチック複合材」と呼ばれ、プラスチック素材約70%、木粉約15%、添加物約15%で構成される材料です。
製作する内容ごとに、比率を変え独自の質感をプラスすることが可能です。
WPCの用途
WPCで製作する用途は、主に以下の内容があります。
・ウッドデッキ・システムバス・フェンス・ベンチ・パーテーション・おもちゃなど
これらの製作物は、おもに「押し出し成形」で作成されています。
一方で最近では、より立体的に作成可能な「射出成形」も可能になりつつあるため、今後より複雑な形状のアイテムが登場するでしょう。
WPCの市場について

WPCは耐久性・強度が高く、おもに建築資材としての用途が増えています。
世界的に環境に優しい素材が求められている背景もあり、サスティナブルな素材として今後需要は増えることが予想されます。
WPCの市場規模
WPCの市場規模は、2022年時点でおよそ64億ドルと推定。
今後2023年から2030年の7年間で、成長率は年間約11%と高い伸び率が予想されています。
また、例えば新興国では2022年時点で2億ドルから、2028年には4億ドルと倍の予測が立てられています。
WPCの市場拡大アプローチ
WPCは現在、木粉をベースにデッキ素材として建築用途のシェアが増えている現状があります。
今後の市場拡大の際のアプローチは、以下の方法が考えられます。
[素材の強度を高める方法]
木粉に配合するプラスチック素材を、より高剛性の高い素材を採用する方法があります。
具体的には以下の素材が検討されています。
・PVC(ポリ塩化ビニル)・ガラス繊維・ナノフィラー・カーボンナノチューブなど
素材の剛性を高める際に、撥水性や強度を高める効果があります。
・竹パウダー・アセチル化木粉など
木粉の代替え素材として使用した場合、質感や剛性を高めることができます。
また、耐衝撃性や伸び率を高める効果も期待できます。
[耐水性・耐吸水性を高める方法]
標準的なWPCは吸水性が高いため、素材が膨張・劣化しやすいデメリットがあります。
このため添加剤や樹脂の配合を変更し、耐水性を高めることができます。
・ゴム・エラストマー・シリカ粒子
複合素材にこれらを使用することで、耐水性・耐吸水性を高める他、耐衝撃性も向上する可能性が高まります。
耐衝撃性は他にもシリカ粒子やポリウレタンでも同様の効果が期待できます。
[高剛性WPCの活用事例]
高剛性WPCは、新たに以下の活用が期待されています。
- アウトドア家具
耐久性、耐水性を高めたWPC素材ならではの用途と言えます。
- 床材
耐衝撃性を高めたWPCは、店舗などの床材として利用できます。
- 自動車部品
とくに高い耐衝撃が求められる部品開発に採用されています。
このように高剛性WPCは耐衝撃性・防水性の効果を発揮できる新たな用途が増えて来ています。
環境に優しいWPCの可能性は、今後ますます高まっていくと言えるでしょう。
まとめ
今回は、WPC(ウッドプラスチック)の特徴や用途、市場について解説しました。
WPCは環境に優しく、サスティナブルな素材であることをお伝えしました。
新たな素材開発として、WPCの強化方法についてもご紹介しましたが、今後世界的に需要が伸びる素材であることは間違いないと言えるでしょう。
WPCの優れた可能性を、引き続き見守っていきましょう。
【参考文献】
「ヨーロッパの木質プラスチック複合材市場規模と市場規模株式分析 - 成長傾向と成長傾向予測 」
(参照)
https://www.mordorintelligence.com/ja/industry-reports/europe-wood-plastic-composite-market