森林バイオマス

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RED-Ⅲでの再エネ「森林バイオマス」の扱いを詳しく解説

再生可能エネルギーのひとつ「森林バイオマス」は、ゼロカーボン社会を実現するためのEUが定める目標値に対し、重要な意味を持っています。

2023年、再エネの新たな目標を定める「RED-Ⅲ」ではバイオエネルギーに関する最終的な定義が決定されました。

本記事では、RED-Ⅲでの再エネ「森林バイオマス」の扱いを詳しく解説します。

RED-Ⅲの経緯と内容

森林バイオマス

ロシアのウクライナ侵攻や気候変動を契機に、世界的なエネルギー不安を抱える現在、EUではバイオエネルギーの扱いに注目が集まっています。

とくに自然エネルギーを主体としたバイオエネルギーの中でも最大量を占める「森林バイオマス」は活発な議論が交わされてきました。

今回、新たなバイオエネルギーの指針となるRED-Ⅲ内で決定された項目を順にご紹介します。

バイオエネルギーの扱いが決定

2023年9月、EUの欧州委員会・議会・理事会で行われた三者間協議(Trilogue4)では、REDⅢ最終版が採択されました。

この中で持続可能の基準を満たすバイオエネルギーを、再生可能なエネルギーとしてREDⅢの目標内に算定できることが可決されました。

カスケード利用の原則を遵守

建築資材等で使用する木材を最終的に燃料として利用するカスケード利用の原則は、生物多様性・環境・気候に対する負の影響を最小限に抑える目的があります。

この原則では、間伐材・未使用な低質材などの利用が認められる一方、おもに産業用途で使用される丸太など原木に対し、金銭的な補助を禁止する条項が明記されました。

これらの措置は、マテリアルとしての用途と原材料が競合しないよう促す産業的な意味合いがあります。

持続可能性基準の厳格化

森林バイオマス

農業・森林のバイオマスについては、新たに調達可能な条件について示しています。

農林業残渣が持続可能性基準を満たす対象である一方、加工残渣・廃棄物についてはGHG削減基準を遵守することのみが求められることになりました。

また、森林バイオマスの対象プラント規模は7.5MW以上の熱投入量が基準となります。

  • 農業バイオマスの基準

農業バイオマスの基準では、おもに「土壌の質」「農地に蓄積された炭素」を可視化し、管理することが求められます。

また、バイオマス燃料の調達が禁止される土地は以下の内容になります。

[原生林・老齢林・生物多様性の高い草地・湿地・森林など]

これらの農地は生物多様性や炭素蓄積が高く、新たな調達先として禁止されることが決まりました。

  • 森林バイオマスの基準

森林バイオマスの基準については、調達可能な国・地域に要件があり「森林管理のための法律・執行体制」が整っていることが条件となります。

このため新たに「伐採施業の合法性」「伐採地の更新」「適切な伐採方法」を確保する必要が生まれました。

この他RED-Ⅲでは新たに「原生林と老齢林の保護や大面積皆伐の上限」を遵守することや「枯死木の持ち出し量についての閾値」を守るなどの項目が追加されています。

また、森林バイオマスを調達する国・地域は「LULUCF基準7」を満たす必要もあります。

これらのバイオマスの基準は、EU内の「森林バイオマスの利用量」と「自然エネルギー目標との整合性」を明確化し、その後の対策への判断基準となることが分かっています。

GHGの削減基準について

GHGの削減基準は、2030年以降に「EU内のすべてのプラントで80%削減」が掲げれています。

一方で削減基準の対象規模は7.5MWと、REDⅢ原案の5MW 以上から緩和されました。

各国の状況を配慮する動きも

以上がEU-REDⅢのバイオエネルギー規定の大枠になります。

この規定と併せて、例えばカスケード利用では「各国の具体性に配慮する」ことや「支援スキームを設計する」など各国の状況を配慮する動きも見られます。

他にも加工に適切でない木材の扱いについて、エネルギー生産以外の利用方法についても一定の条件をもとに認めています。

公正な移行の実現に向けた取組み

2021年1月、EUは欧州グリーン・ディール投資計画の中で公正な移行に向けた取組みを提案しました。

具体的には気候の改善が難しい地域、産業を確認し、「公正な移行基金」による圏域レベルの支援を行うことを決定しています。

 2023年10月時点では、具体的に基金をどのように分配するかの基準は決まっていませんが、支援を希望する地域からの募集を受付しています。

森林バイオマスの適切な取組を

RED-Ⅲでは森林バイオマスを「バイオエネルギー」として適切に取組む内容が盛り込まれています。

このため森林・農業バイオマスの基準を明確化することや、カスケード利用のルール作り、GHGの削減基準などを一本化する目的があることが分かります。

森林バイオマスが今後もEU内のカーボンエネルギー成長の重要性を増していくことを、引き続き注視する必要があると言えるでしょう。

まとめ

今回はRED-Ⅲでの再エネ「森林バイオマス」の扱いを詳しく解説しました。

RED-Ⅲの森林バイオマスの扱いは、2050年のカーボンフリーに向けた「重要なエネルギー源」として適切なルール作りが行われていることをご紹介しました。

EUのバイオマス政策、事業を参考に日本国内でもカーボンフリーに向けた取組みを強化していきましょう。

【参考文献】

EU-REDⅢ最終版におけるバイオエネルギーの取り扱い 「https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20231011.php」(参照)

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