近年、世界中で「サステナブルな原料調達」や「カーボンニュートラル」に対する関心が高まっています。
また、これらを認証する国際的な認証制度として「ISCC・ISCCプラス」がありますが、2つの違いや特徴、導入事例を知りたいといった担当者のご意見も多い傾向があります。
本記事では、ISCC・ISCCプラス認証の違いや由来、意味を分かりやすく解説し、欧州および日本企業の導入事例を交えて紹介します。
ISCC認証とは?

ISCC(国際持続可能性・カーボン認証)は、2010年にドイツで設立された国際的な認証制度です。
この制度はおもに 「再生可能エネルギー指令(RED II) 」に基づいており、現在EUに輸出されるバイオ燃料・バイオマス原料のサプライチェーンで広く利用されています。
[ISCC認証の目的]
- サステナブルな原料調達を保証する
- 温室効果ガス排出削減の証明
- 原料から最終製品までのトレーサビリティを確保
- 社会的・環境的基準の遵守(森林伐採や人権侵害の回避)
ISCCプラス認証とは?
一方、ISCCプラス認証は、ISCCの仕組みをさらに拡張したもので、エネルギー分野にとどまらず「化学薬品・プラスチック・包装材・食品・飼料」にも対応できる制度です。
とくに注目されている分野では、バイオマス由来原料やリサイクル原料を活用した製品を出す際に、サステナビリティを証明できる点です。
[ISCCプラスの特徴]
- 対象範囲が広い:食品包装、化学品、プラスチック業界などでも利用可能
- マスバランス方式に対応:リサイクル原料とバージン原料が混在する場合でも、持続可能な分を帳簿上で割り当てることが可能
- 消費者・取引先に対する信頼性:環境配慮型製品であることを国際的に保証
このようにサスティナビリティの証明として、欧州を中心に普及しつつあるISCCと、幅広く対象範囲を広げたISCCプラスが加わった印象です。
ISCCとISCCプラスを比較
両者を比較すると次のように整理できます。
| 項目 | ISCC | ISCC PLUS |
| 対象分野 | 主にエネルギー(バイオ燃料、バイオマス) | 化学品、プラスチック、食品、飼料など広範囲 |
| 適用地域 | EU中心、国際的に拡大 | 世界全体、特に非エネルギー分野 |
| 必要性 | EU輸出条件として必須 | サステナブル製品の差別化・市場競争力強化 |
| 特徴 | RED IIに準拠 | マスバランス方式に対応、幅広い製品で利用可 |
それぞれの違いとして、ISCCは「燃料向け」、ISCC PLUSは「暮らし向け」と覚えると分かりやすいでしょう。
制度の由来と意味
ISCCの誕生背景には、地球温暖化防止と持続可能な資源利用があります。2000年代後半、EUでは再生可能エネルギーの利用拡大を進める中で、「バイオ燃料が本当に環境に良いのか?」という疑問が生じました。
- 環境負荷の基準を定める
たとえば、熱帯雨林を伐採してパーム油を生産すれば、むしろCO₂排出は増えてしまいます。こうした問題に対応するために設立されたのがISCCです。
- 対応分野を拡大
その後、プラスチックごみ問題や資源循環の必要性が高まると、バイオマスやリサイクル原料を活用する非エネルギー分野にも認証を広げる必要が出てきました。その結果誕生したのが ISCCプラス です。
つまり、この制度は 「持続可能性の証明」 と 「国際的な信頼の担保」 という2つの意味を持ちます。
欧州企業の導入事例
欧州では、すでに多くの大手企業がISCC PLUSを導入し、製品の差別化や市場競争力の強化に活用しています。
事例① BASF(ドイツ)
世界的な化学メーカーBASFは、ISCC PLUS認証を取得し、マスバランス方式を導入しました。バイオナフサやリサイクルプラスチックを原料に使いながら、従来製品と同等の性能を持つ化学品を市場に提供しています。これにより、自動車部品や包装材に「サステナブルな選択肢」を示しています。
事例② LyondellBasell(オランダ)
世界有数のプラスチックメーカーであるリyondellBasellは、ISCC PLUS認証を受けたリサイクル原料を用いたポリプロピレンを展開しています。食品包装や日用品に採用され、欧州市場でのシェア拡大につなげています。
欧州で制度を導入した中小企業の事例
欧州ではISCC制度を活用する中小企業の事例も出てきていますが、いくつかの問題点が指摘されています。
- 認証取得にかかるコスト・手間の負担
小規模事業者では、審査対応やマスバランス方式への整備が難しい場合が多い傾向があります。
- 広報・公表の優先順位
小規模業者ほど、財務的・人的リソースが限られ、導入事例を外部に発信する機会が少ないです。
このように中小企業では導入に難しい点も存在します。
このためISCC制度活用のメリット・デメリットについて国内企業も検討すべき状況と言えるでしょう。
日本企業の導入事例
日本でも徐々に導入が広がっています。
事例① 三菱ケミカル
三菱ケミカルは、ISCC PLUS認証を取得し、バイオマスやリサイクル由来の原料を活用した化学品を展開しています。国内外の顧客に対して「環境対応型の選択肢」を提示し、グローバル市場での存在感を高めています。
事例② 花王
花王は、洗剤や化粧品の容器にISCC PLUS認証を受けたリサイクル樹脂を採用。消費者に向けた「環境にやさしい製品」の提供を進め、ブランド価値の向上に結びつけています。
国内企業は導入を検討すべき?

ISCC認証を、国内企業も導入を検討すべきでしょうか?
いくつかの判断ポイントをご紹介します。
1. 海外取引のパスポートになる
EUなどでは、認証がないと取引できないケースもあります。輸出やグローバル企業との取引を目指すなら、必須条件と考えるべきでしょう。
2. 国内市場での差別化に有利
日本ではまだ導入企業が少ないため、認証取得は先進的な取り組みとして評価され、営業やブランド力向上につながります。
3. サプライチェーン全体で信頼を得られる
原料から製品まで「持続可能性を証明」できるため、顧客や取引先に透明性と信頼性を示せます。
4. 社内の意識改革にも役立つ
認証取得の過程で社員が学び、SDGsや環境対応の理解が社内に根付くきっかけになります。
ISCC認証やISCC PLUS認証は「規制対応」だけでなく、国際取引の拡大、国内市場での差別化、サプライチェーン強化、社内教育に役立つツールです。
国内企業にとっては「守り」ではなく「攻めの戦略」として活用することが、導入のポイントと言えるでしょう。
まとめ
ISCC認証とISCC PLUS認証は、単なる環境ラベルではなく、企業の持続可能性を国際的に証明するパスポートです。
今後、国際取引や消費者ニーズに応えるためには、ISCCやISCC PLUS認証の導入がさらに重要となっていくでしょう。ISCCは企業にとって、環境対応だけでなく、経済的な競争力を高める戦略的ツールでもあるため、積極的に活用していきましょう。る戦略的ツールでもあるため、積極的に活用していきましょう。
参考URL : 「ISCC PLUS認証とは?」https://www.psjp.com/sustainable/column/isccplus/

