愛知県には約218,000ヘクタールの森林が広がっており、国内では11番目に小さい森林面積を持っています。愛知県の森林は、大きく2つの区域に分かれて管理されています。
1つは、名古屋市をはじめとする33市12町1村からなる「尾張西三河森林計画区」、もう1つは東部に位置する豊橋市など5市2町1村からなる「東三河森林計画区」です。
愛知県全体の約42%が森林に覆われており、そのうち約140,000ヘクタールが人工林です。この人工林率は、佐賀県や高知県に次いで国内で3番目に高く、愛知県の森林全体の64%を占めています。
今回は、2024年版の「尾張西三河森林計画区」と「東三河森林計画区」の情報をもとに、愛知県の森林の現状について詳しく解説していきます。
(引用:愛知県の地域森林計画)
愛知県における森林の現状
愛知県の森林面積は、地域別に見ると、「尾張西三河地域」と「東三河地域」それぞれが約109,000haの森林を有しており、その大部分が民有林です(尾張西三河地域で97%、東三河地域で93%)。
森林の種類では、人工林が全体の64%を占めており、主要な樹種としてスギとヒノキが挙げられます。尾張西三河地域では人工林が55,000haあり、スギが26%、ヒノキが54%を占めます。一方、東三河地域では人工林が77,000haで、スギが47%、ヒノキが42%となっています。
これらの人工林は「高齢化」が進んでおり、愛知県の人工林の85%が、標準伐期齢を超える状況にあります(尾張西三河地域は81%、東三河地域は89%)。今後10年間でさらに高齢級の人工林が増加すると見込まれており、これが持続可能な森林管理における大きな課題となっています。
(引用:あいちの森林・林業)
愛知県の「森林計画」の実行結果
愛知県の森林計画(2016~2020年度)の実行結果は、人工林の多くが標準伐期齢を超えているにもかかわらず、これに関する適切な伐採と再造林が進められていません。
木材の高騰により計画的に実行できていないのです。また、予算の縮小により、林道の開設にも消極的です。具体的な実行結果は、以下の通りです。
間伐
計画における間伐面積の実行率は65%(尾張西三河地域では68%、東三河地域では61%)に達し、計画に対する一定の成果が見られました。東三河地域では、特に道路沿いの間伐を重点的に行ったことで、一定の実行結果となりました。
主伐
主伐については、木材価格の低迷や再造林費用の不足が影響し、尾張西三河地域では実行率が21%にとどまり、東三河地域では特に低い実行率となったと考えられます。このような状況により、ますます人工林の高齢化が進み、伐採が遅れる状況が続いています。
人工造林
人工造林の実行率は非常に低く7%(尾張西三河地域で9%、東三河地域で4%)いう結果です。計画との差が大きく開きました。再造林の遅れが、森林の持続可能な管理における深刻な問題となっています。
天然更新
天然更新は計画を上回る成果を見せ、110%(尾張西三河地域で130%、東三河地域で89%)の実行率です。主伐が進まなかったことや再造林費用が不足したことにより、天然更新に頼る形となりました。しかし、天然更新の面積は、324ヘクタールで、人工林造林の計画面積と比較すると、13分の1程の面積のため、あまり期待はできません。
林道開設と改良
林道開設は進捗が遅れ、林道開設の実行率が8%(尾張西三河地域では5%、東三河地域で11%)にとどまりました。また、改良については、計画の21%の実行率(尾張西三河地域では15%、東三河地域で23%)で、公共事業予算の縮減が、これらの整備計画に大きな影響を与えていると考えられます。
治山事業
治山事業では、尾張西三河地域で実行率が151%と計画を大幅に上回り、荒廃地の復旧が積極的に進められました。東三河地域でも、計画の89%が実行され、順調に推進されました。
(引用:あいちの森林・林業)
愛知県の森林管理における、今後の課題
令和6年からはじまった森林環境税とは別に、愛知県では、平成21(2009)年度からはじまった、県民税を財源とする「あいち森と緑づくり税」を利用して、森林や里山林、都市の緑を守り育てるための「あいち森と緑づくり事業」を進めています。
この事業は、地域の豊かな自然環境を次世代に引き継ぐことを目的としています。
しかし、残念ながら、事業開始から十数年が経過した現在でも、愛知県内の森林整備は思うように進んでいません。
特に、愛知県産木材の利用が十分に進んでおらず、森林の主伐が滞っている現状が問題視されています。県内の木材が活用されなければ、森林の管理や再生が難しくなり、結果として地域の環境保全にも支障をきたす恐れがあります。
令和5(2023)年度までとされていた課税期間は、令和10(2028)年度まで延長されることが決定しました。この延長は、愛知県の森林環境を守るための取り組みを継続するための重要なステップです。
ただし、税の延長だけでは問題の根本解決には至りません。愛知県では、県産木材の利用促進を図る「木づかい」の取り組みを強化し、持続可能な森林管理を目指しています。
愛知県の豊かな自然を未来に残すためには、県民一人ひとりがこの問題に関心を持ち、具体的な行動を起こすことが大切です。それは、地域の森林を単なる保全対象としてだけでなく、経済的価値を生み出す資源としても活用することを意味します。
愛知県産木材を活用した商品開発や、地域独自のブランドづくりを通じて、森林を新たな収益源とする取り組みが行われることで、愛知県が目指す循環林業が現実のものとなるのです。
地域全体で取り組む持続可能な森林管理が進展すれば、愛知県の豊かな自然環境は未来へと引き継がれ、次世代にとってもかけがえのない資産となるでしょう。
【参考文献】
愛知県(2024_8_15)
愛知県(2024_8_15)