木粉と樹脂を掛け合わせた「ウッドプラスチック(WPC)は耐久性など従来にない性質をもつ新素材として注目されています。
ウッドプラスチックには製品の形状や大きさ、用途別にいくつかの成形方法があります。
以前は大型の製品が主流でしたが、最近では新たな成形方法により小型の製品化も実現されています。
本記事では、木粉と樹脂によるウッドプラスチックの成形方法の違いについて解説します。
ウッドプラスチックの成形方法の違いとは?

木粉と樹脂の複合材、ウッドプラスチックは大きく2つの成形方法がありますので、違いや特徴についてご紹介します。
- 押出成形
樹脂を高温の熱で溶かし、一定の形状に押し出して成形する方法です。
押出成形は型に押し出すため、シンプルな長方形など部材としての抽出が適しています。
このためベンチなど公園設備やウッドデッキなど長尺・大型製品の成形に適した方法と言えるでしょう。
- 射出成形
マグカップやバケツなど、一定の形にするため熱で溶かした樹脂を金型に閉じ込め、冷やして固める方法です。
射出成形では金型次第で、ある程度複雑な形状の製品も量産することができます。
しかしウッドプラスチック材は射出成形する際の難易度が高く、商業的に生産が難しいとされて来ました。
このようにウッドプラスチックを製品化する際は押出・射出成形の2種類があります。
そして従来難しいとされて来た射出成形についても、技術的にクリアした成形方法が確立されています。
射出成形のポイントについて
ウッドプラスチック素材は、材料を溶かす際の温度によって以下の特性が出ます。
- 温度が低い状態(200℃以下)
ウッドプラスチック材の粘度(溶融粘度)が大きく、射出成形時に金型に流し込む作業が難しくなります。
- 温度が高い状態(200℃以上)
木質成分が「熱分解」され、悪臭・黒い焦げが発生し、こちらも成形が難しくなります。
このようにウッドプラスチックを射出成形する場合、温度管理が非常に難しいことが分かります。
最新技術で課題をクリア
射出成形が難しい理由は植物の主成分(セルロース・ヘミセルロース・リグニン)の温度変化による特性によるものです。
しかし最近では、最新の技術を用いてウッドプラスチックの融解粘度を低減することに成功した事例が出てきています。
融解粘度を下げることで、従来難しいとされていた射出成形が可能になるため、ウッドプラスチックの製品用途はますます広がることが予想されます。
ウッドプラスチックの特徴

ウッドプラスチックは従来のプラスチック素材と比べ、いくつかの特徴がありますのでご紹介します。
〈ウッドプラスチックのメリット〉
- 安全性が高い
プラスチック素材と比べ汚れにくく、カビが発生しにくい、腐食の心配が少ないなど安全性が高いメリットがあります。
- 弾性率が上昇する
従来のプラスチック素材と比べ、弾性率が上がるため硬く、丈夫になる他、高温に耐えられる素材になります。
- 製品同士を接着できる
ウッドプラスチックで制作物の表面を、サンドペーパーなどで擦れば製品同士を接着することが可能です。
- CO2排出削減が可能
製品として使用後のリサイクルができる他、可燃物として燃やし処分することもできるため、CO2削減に効果が期待できます。
この他、塗装がしやすい、静電気を帯びにくいなど製品開発時のメリットがあります。
〈ウッドプラスチックのデメリット〉
- コストがかかる
木粉製造や混ぜる、加熱するなど一定の工程が必要になるため、コストが高くつく点はデメリットでしょう。
- 金属製の留め具が使えない
ビスや鋲など、金属製の留め具を打ち込むことができない素材が多くあります。
このためパーツで組み込む製品を企画する際は設計に注意する必要があります。
コスト面では、量産化することである程度コストを抑えることに繋がりますが、プラスチック素材と比べコストがかかる点は覚えておくとよいでしょう。
環境負荷軽減への取り組み
ウッドプラスチックは、環境負荷を改善する方法としても注目されていますので、その理由をご紹介します。
- 資源の有効活用を促進
ウッドプラスチックの原料となる木粉は、間伐材の有効活用の方法として、地域の森林保全として役立てることに繋がります。
一方で輸入石油を用い精製する合成樹脂は、大幅に削減できることから省資源化にも効果があります。
このため日本の森林保全や、燃料ではなく「素材」としての活用が期待されています。
- 世界的な環境対策のひとつに
木粉と樹脂という素材としてウッドプラスチックを製造することで、国内の森林を守り、CO2排出を削減することに繋がることから、日本が行う環境への取り組みとして世界に発信できます。
SDGsでは、持続可能な社会に向けた取り組みを世界レベルで実践しているため、とくに森林保護、海洋プラスチック問題解決に向けた取り組みとして、ウッドプラスチックの普及がポイントとなって行くでしょう。
製品に向けた木粉開発を
ウッドプラスチックは製品の目的、用途に合わせた木粉・樹脂の素材開発が重要となります。
例えば木粉では、粒度の均一化や不純物を取り除くなど高品質な木粉素材の開発が重要です。
合同会社ELEMUSは、愛知県三河地域で原木や木片を利用して木粉を製造し、バイオプラスチックの開発を行うなど、海洋プラスチック問題の解決に向けた事業を展開しています。
地域で入手可能な原木や木片、または間伐材の有効活用をお考えの際は、ぜひELEMUSにご相談ください。
まとめ
今回は、木粉と樹脂によるウッドプラスチックの成形方法の違いについて解説しました。
ウッドプラスチックの成形は、技術的に難しいとされていた射出成形の方法が開発され、製品化に向けた取り組みが進んでいることをご紹介しました。
また、環境負荷を減らす取り組みとしてもウッドプラスチックは期待されていることも解説しました。
木粉素材の開発により日本の森林保護の取り組みを、今後も続けていきましょう。
【参考文献】
「射出成形できる次世代ウッドプラスチック」