企業が実践するCO2排出量削減に向けた取組みのひとつに「カーボンクレジット」という制度があるのをご存知でしょうか?カーボンクレジットとは、温室効果ガスを削減できた際にクレジットを発行し売買できるシステムです。本記事では、カーボンクレジットの概要や国内、海外での取組みを詳しく解説します。
カーボンクレジットとは?

温室効果ガス(CO2など)の排出量は、想定される見通しと実際の排出量に差が生じます。
カーボンクレジットは、この見通しと実際の排出量の差をクレジットとして認証し、企業単位で取引できるシステムを意味します。
カーボンクレジットの見通し
近年、気候変動への対策が世界的に求められている背景から、カーボンクレジットは有効な手段として活発化しています。
例えば基準値より温室効果ガスの排出量が多い企業・産業では
カーボンクレジットを購入することで、排出量基準をクリアできるメリットがあります。
一方、カーボンクレジットを保持している企業は、自社で捻出したクレジットを資金に替えることができるメリットがあります。
カーボンクレジットとカーボンオフセットの違いは?
カーボンクレジットと似た意味をもつ用語に「カーボンオフセット」があります。カーボンオフセットは、温室効果ガスの削減が企業努力だけでは難しい場合に、カーボンクレジットを購入し排出量をオフセット(相殺)する意味合いがあります。
カーボンオフセットを行う際に利用される他の手段では、森林保護活動や再生エネルギーの促進などがあります。
カーボンクレジットの市場規模
カーボンクレジットの世界的な市場規模の現状は以下の内容となります。
- 国内の現状
日本国内では2023年、カーボンクレジットの市場が創設され、取引が始まりました。
参加企業数は2023年12月の時点で、約240社となっています。
- 海外の市場
海外のカーボンクレジット市場は2021年に急激に拡大し、発行残高が約4億8,000万トン(t-CO2e)に成長。
翌2022年は約4億7,500万t-CO2eと僅かに減少しています。
カーボンクレジットの取引き方法
カーボンクレジットは取引きの方法として次の2種類があります。
- ベースライン&クレジット方式
排出量を基準に取引する方式を「ベースライン&クレジット」と呼びます。
例えば太陽光発電設備など対象となるプロジェクトが実行されなかった場合に、想定していた排出量をクレジットとして算出するものです。
- キャップ&トレード方式
一方で排出枠を基準に取引する方式は「キャップ&トレード」と呼ばれます。
こちらは温室効果ガスに排出枠(基準)が定められている場合に、実際の排出量が基準以下であった際、余剰排出枠を売却できる仕組みです。
現在、欧州やアメリカ、中国、東京都などの公的機関で採用されています。
カーボンクレジット国内外の種類について

カーボンクレジットは、国連や政府機関、民間が運営するさまざまな種類があります。
国際規格のカーボンクレジット
国際的な規格のカーボンクレジットとして、以下の2種類があります。
①CDM(クリーン開発メカニズム)
CMDは国連が創出したカーボンクレジットの規格で、京都議定書で認定された制度です。
この制度は後進国が先進国と共同で温室効果ガスの排出量を削減するプロジェクトを立ち上げる際に、実際に削減された量をクレジットとして先進国に移行できるシステムです。
具体的には発展途上国は技術・資金の提供を受けることで開発を強化できる一方、先進国はプロジェクトを通じ途上国が達成した削減量を自国の排出量に賄える仕組みです。
②JCM(二国間クレジット)
JCMは二国間でのクレジットで、おもに先進国から途上国へ技術やシステム、インフラ供給を通じて温室効果ガスの排出量削減などを実施します。
その後途上国の削減量を、貢献度として評価し自国での削減目標に活用するシステムです。
国内規格のカーボンクレジット
日本国内の規格で代表的なカーボンクレジットは以下になります。
J-クレジットは行政が主導するカーボンクレジットの規格で、2013年に発足しました。
企業が省エネ、再生エネ設備を導入、森林活動などで発生した温室効果ガス排出量の削減、吸収量をJ-クレジットとして変換するもので、クレジットは自社の削減量に割当てることができます。
このように政府が主導する他にも、民間が主導するVCS、GSなどのカーボンクレジットも国際規格として存在します。
温室効果ガス排出量の削減を、クレジットに変換できるシステムは今後益々多様化し活用されていく可能性が高いと言えるでしょう。
まとめ
今回は、カーボンクレジットの概要や国内、海外での取組みを詳しく解説しました。
カーボンクレジットは世界的な温室効果ガス削減への対策として、さまざまな規格が存在することをご紹介しました。
また、カーボンクレジットを通じて新興国の発展、先進国の経済活動にも効果があることがご理解頂けたのではないでしょうか?
カーボンクレジットを環境負荷を軽減する取組みとして、今後もその動向を見守っていきましょう。
【参考文献】
「「カーボンクレジットとは 仕組みや種類、デメリットをわかりやすく解説」」
(参照)https://gurilabo.igrid.co.jp/article/5071/